ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第15章 第十五話
レイニーさんは衝撃的なことを言った。
「貴女、それ、妊娠してるんじゃないの?」
「え?」
私は頭が真っ白になった。
「覚えはないの?」
「な…くはないかもしれません…」
え?あの一回で?あの時??
私はさらにクラクラしてきた。
「とりあえず、二階で横になるのよ!」
その言葉とともに、レイニーさんは漢らしい声を上げつつ私をお姫様だっこした。
「ごめんなさい…」
「あら、軽くて重しが足りないくらいよ☆惚れないでね☆」
「大丈夫です…」
と、私は冷たくあしらっておいた。
横になって、一時間くらいしただろうか。
私は眠れずにいた。
もしも、本当に妊娠していたら、どうしたらいい?
このまま一人で産むの?
それとも…
一瞬ユラくんの顔が浮かんだ。
でも、だめだ。
ラドクリフ家に戻ったら、赤ちゃん取り上げられちゃう。
そして、その子も魔法の研究の材料にされてしまう。
…それだけはだめだ。
「どうしよう…私、一人で、育てられるのかなぁ…」
不安が押し寄せて、結局一睡もできなかった。
次の日、私は昼間にレイニーさんに付き添われて産婦人科に来ていた。
「レイニーさん…あの、夜遅かったのに、ごめんなさい」
「いいのよ。ここの産婦人科の先生は腕がいいの。安心してね」
レイニーさん、口調はいつもの口調だけど、化粧をしてなくて、普通の男の人みたいだった。
「なぁに?すっぴんも美人でしょぉ?」
「ジロジロ見てすみません、珍しくて…」
そんな会話をしていると、先生に名前を呼ばれた。
「お祝いしないとね」
「お祝い…してくれるんですか?」
結果を聞いて呆然としている私に、レイニーさんは言ってくれた。
「もちろんよぉ。めでたいじゃない。おなかの中に、新しい命がいるのよ。…こんな素晴らしいことがほかにあるの?」
その言葉を聞いて、私は自然と涙がこぼれてきた。
「…産みます。私、頑張って、産みます…」
涙が次々あふれてきて、私はその日、人生で一番泣いたかもしれない。