ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第12章 第十二話
「無事に、金眼の男が見つかるといいのですが…」
いつまでも婚約者としてはいられないし…。
「大丈夫だ。必ず見つけて見せる」
そう言って私の頭に、ぽんと手を置いた。
再び顔が熱くなる。
「こども扱いしてますね」
私は恥ずかしくてその手を押しのけた。
「ははは、お前に大人の要素はない」
たしかにー。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
そう言って、おのおのの部屋へと別れた。
…それが、本当の別れになるとは思わなかった。
夜も更けた時間。
私は珍しく眠れずにいた。
部屋にある水差しから、何度水を飲んだことか。
そろそろ布団に入ろう、と考えていた時、ノックの音がした。
(セカ、何か言い忘れたことでもあったのかな?)
「はーい!」
ガタン、と静かに扉を開けるとそこにいたのは、なんとハリーナ様と、セカのご両親だった。
「え?あ!すみません、こんな格好で…」
私はすっかり油断してパジャマだった。
「いいのよ。こちらこそ夜中にごめんなさい」
そう言って、ハリーナ様は持っていたろうそくの火を消した。
私は…この時点でなんとなくこの後言われることが想像できてしまった。
とにかく部屋にあるテーブル席にかけてもらった。
「もう察してるわよね。…貴女には、このままこの家を出て、まっすぐラドクリフ様のお宅へと行ってもらいたいの」
座ってすぐ、ハリーナ様はテーブルの前に手を組んで、告げた。
(やっぱり…)
「ごめんなさい、シアンさん。貴女のことは、調べさせてもらったの。…ただの町民なら、応援してもいいと思ったのよ、でも…」
ランディス夫人は辛そうに言う。
「こんな形で、伝えてしまってすまない。セカはな、私たちの言葉を聞かないんだ…」
旦那様も困ったように眉を下げる。
「…わたくしも、代々仕えてくれているランディス家に何かあったら、とても辛いの。ごめんなさい…」
そう言って頭を下げるハリーナ様。
…もう、これは…やっぱり……
私は、下を向いて目を閉じた。
「わかってました…。なんとなく。こうなることは…」
そう、もうどこかで決心していたの。
もうどこにもいけないってこと、わかってた。