ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第12章 第十二話
「ようこそ、ランディス家へ」
金髪碧眼の美女とダンディーな男性が出迎えてくれた。
これが、セカのご両親か。
両方に似てるんだなぁと思いつつ、直前に教わった挨拶を必死にした。
「ご招待、ありがとうございます。わたくしは、シアンと申します」
「まあ、素敵なお嬢さんだこと。セカったら、女性は苦手とか言っていたのに」
「どうぞ、ゆっくりおすごしくださいね」
そう言って、二人は屋敷の中へ消えていった。
「あれ??あっさりと…」
私は罵られる覚悟で馬車から出てきたので、拍子抜けだった。
「夕飯は一緒に食べると思うから、その時まではゆっくりしてくれってことだと思う」
「夕飯!!!テーブルマナーなんて全然わからないですよ!!」
「今から夕飯までみっちりやるぞ!」
こうして案内された広いお部屋で、二人でこっそりテーブルマナー講習をした。
「ええっと、シアンさんと言いましたね。…出会いはどこで?」
ランディス夫人は、ワインを飲みながら聞いてきた。
「は、はい。…あの、わたくしは、商店街で帽子屋を営んでおりまして…オープンの日にハリーナ様のお帽子を作ることになりまして…そこで出会いました」
出会いに関しても、変な嘘をついても仕方ないので、正直に答えた。
「そうか。…まあ、そこでお互いに意気投合したってわけか」
と旦那様がうなずく。
そんな言い方されると、嘘とはいえ、なんか気恥ずかしくなってくる。
しかし、そのやりとりを、いぶかしげな表情で終始見ていたのはセカだった。
(セカ、何にも話さないけど、普段からそんな調子なのかな?)
私は会話にも気を使いつつ、先ほどのマナー講習を必死に思い出して食事した。
こうして無事に食事会が終わり、部屋に戻る途中、
「昨日まで、勘当されるくらいの勢いで反対していたのに、やけに優しかった」
とセカは、腕を組んで怪しんでいた。
「感じのいいお父様とお母様でした。こんな平民の私にも丁寧に接してくださって」
ただ、テーブルマナーが完璧にはこなせず、悔やまれた。
「じゃあ、また明日」
部屋まで送ってくれたセカが、そう言って手を振った。
「ありがとうね、セカ。反対を押し切っていてくれたんですね…いつもありがとう」
「いや、今回は俺のせいだったし、できることはなんでもしたいんだ」