第17章 サイドキックのつくりかた(爆豪勝己)
「すまんで済んだらケーサツいらねんだよ!」
「すっ!すみま……っていうかダイナマイト……」
蜘蛛がいなくなった安心感からか、漸くいつもの表情に戻ったサイドキックが勝己の方を見た。
「あ?」
「カノジョに虫が出た!助けて!って言われてもそういう態度すんですか?」
「あぁ?」
突拍子もない質問をされて、勝己は少し戸惑った。
「……あー……」
そして、思い出していた。
以前、2人で暮らす部屋に蜘蛛が現れた時の事を。
その時隣にいた勝己は、彼女が悲鳴の一つでも上げるかと思っていたが、繭莉は顔に似合わず実に冷静だった。
今目の前にいるこのポンコツサイドキックのように騒ぎ立てる事もなく、素手でそっと蜘蛛を掴むと窓を開けて優しく外に逃がしていた。
「……アイツは、素手でいけっから」
思い出したままの事を言うと、繭莉の存在を知っていたサイドキックは「えぇ!?」と驚いた表情を見せる。
「そ、そうなんすか!?あの顔で!?マジかぁ……仲間かと思ってたのに……」
「ンな事勝手に思うんじゃねぇよ!つーかてめぇはビビりすぎなんだよ、害虫くれぇでよ!」
勝己が強めの口調で言うと、項垂れていたサイドキックは弾かれたように顔を上げてピシッと背筋を伸ばした。
「ホント!すみませんっした!」
「じゃあ、俺帰んぞ」
「はい!お気をつけて」
サイドキックに見送られながら、勝己は事務所を後にした。
「……はぁ……」
夜の街を歩きながら、勝己は小さく溜息を吐いた。
もう日付はまたいたが、今日は予想外の事ばかり起きて疲れた。
早く帰って繭莉に、会いたい。
少しでも早く家に帰ろうと、勝己は早足になる。
もう遅いからもしかしたら寝ているかもしれないが、それだったらそれでいい。
でも、あわよくばさっきの続きがしたいと少し思う。
気付けば、勝己は走り出していた。
「……?」
家に着いた勝己は、妙な違和感を覚えた。
家の電気は点いているのに、人の気配がない。
「おい、繭莉」
寝室のドアを開けるが、そこには誰も居なかった。
「繭莉!」
浴室、トイレ、ベランダ。
窓とドアのついている所は一通り開けた。
しかし、この家のどこにも繭莉はいない。
勝己の顔は、一気に青ざめた。