第17章 サイドキックのつくりかた(爆豪勝己)
ワンチャン繭莉が電話でもかけてきてくれればという下心が丸見えだ。
「……いい度胸してんじゃねぇか」
ゲリラ豪雨の如く現れて去って行った男の言動によって、勝己の苛立ちは瞬間湯沸かし器のように一瞬でマックスに達した。
気付けば持っていた紙切れを破いていた。
「あ、あのっ、勝己さん、そのっ……ごめんなさい……!」
自分の所為で勝己が苛立っていると思ったらしい繭莉が、今にも泣きそうな顔で謝ってくるが、そうではない。
「違ぇよ!」
勝己が声を荒げたので、繭莉の肩がビクっと跳ねた。
「俺はあのクソ野郎に」
ムカついてる、と言おうとしたが、その声も「繭莉ちゃん!」という元気な女性の声にかき消される。
今度はどいつだと声のした方を見ると、繭莉が「あ!」とその女性に駆け寄った。
「藤崎さん!その後お加減どうですか?」
「もー、ただのギックリだからもう大丈夫よ!元気元気!」
どうやら会話を聞く限り、その女性は以前繭莉が店番をしていたギックリ腰になったというパン屋のおばちゃんだろう。
「繭莉ちゃんのお陰で本当助かったわ!こんな優しい子がいるなんてねぇ……ぜひともウチの息子の嫁に来て欲しいわぁ!ね、どう?」
「あ、え……?」
手をガシっと掴まれて、またもや戸惑う繭莉。
あぁ!?
息子の嫁だぁ!?
きっと、パン屋のおばちゃんは世間話程度でそんな事を言ったのだろう。
しかし、勝己は先程の一件でちょっとばかりそういう話に敏感になっていた。
「おい」
勝己が堪らず繭莉の肩を掴むと、おばちゃんは気まずそうにサッと表情を曇らせて、掴んでいた繭莉の手をパッと離した。
「あ、あら!彼氏?いたの?ごめんなさいねぇ冗談よぉ、繭莉ちゃん、今の話忘れて!じゃあまたね!」
やだわ私ったら、と、困り顔で手を振りながらおばちゃんもそそくさとその場を去って行った。
困り顔をされるという事は、勝己は鬼のような形相でもしていたのだろうかと思ったが、ワンチャン押せば繭莉は落とせそうだという考えの奴に立て続けに出くわしたのだ。
しかも、どいつも自分の存在に気付きもしない。
鬼のような形相をさせる奴が悪いと勝己は結論付けた。
つい、そんな表情のまま繭莉を見てしまった。