第17章 サイドキックのつくりかた(爆豪勝己)
勝己がそう言うと繭莉はメッセージの存在に気付いていなかったらしく、慌ててポケットからスマホを取り出して通知をチェックし始めた。
「ご、ごめんなさい気付かなくて……」
「別に」
「あ、あのっ……勝己さん……」
「あ?」
繭莉に視線を移すと、赤らんだ顔で手に持っていたスマホを覆うケースの端を指でいじっている。
繭莉は、いつもこうだ。
何か言いたい事があってもすぐには言わない。
自分の言いたい事を言うのが相手に悪いと勝手に思っているのだ。
「ンだぁ、はよ言えや」
いつもの事だと思って勝己が催促すると、漸く口を開く。
「……あの……夕飯、何食べたいですか……?」
んだよ。
それぐらい、遠慮しねぇで言えよ。
いつもの事とはいえ、どうにもこんな感じでは毎回重大発表をされる気分だ。
これが続くようでは、いつになったらポンポンと会話のキャッチボールを出来るようになるのかと一抹の不安が勝己を襲う。
「別に……」
何でもいい、と続けそうになって言いとどまる。
なんだ……
何でもいいが一番困んのか?
そもそも、夕飯何がいいかとか、聞かれた事ねぇし。
「辛ぇもん」
考えた結果、それだけ言うと繭莉の顔が何故かぱっと明るくなる。
「分かりました……辛いの……」
丁度渡ろうと思っていた横断歩道が信号待ちになった所で、繭莉はスマホのレシピサイトかなんかを開いて眺めていた。
それを見ていた勝己は、なんだか自分の頬が緩んでしまった気がして少しばかり気恥ずかしい気持ちになって彼女から視線を逸らした。
繭莉といると、自分が少し気持ち悪い。
どういう訳か無駄な気を遣ってしまったり、優しくなってしまうのだ。
そんな自分に勝己はいまだに慣れずにいる。
でも、彼女に惚れた以上こんな自分もいるのだと思って慣れていかなければいけないのだ。
まぁ、慣れるのなんか何億光年先になるのか分からないが。
「勝己さん、これとかどうですか?」
繭莉にいきなり話しかけられて勝己ははっと我に返った。
「あ?どれだよ」
彼女が差し出してきたスマホの画面をひょいっと覗く。
「……ただの麻婆豆腐じゃねぇか」
「そう、ですけど……」
「それ、鷹の爪も入れっと美味いってよ」