第17章 サイドキックのつくりかた(爆豪勝己)
『今日は早く帰れそうだ』
日はとっぷりと落ちて、夜の初め。
勝己は、その一言だけをスマホに打ち込むとメッセージを送信した。
「おっ、ダイナマイト!カノジョっすかぁ?」
いつの間に後ろに居たのか、サイドキックがにんまり笑いながら勝己を茶化しにかかる。
「っせぇな!お前は仕事しろや!」
「そうっすねぇ~、早く仕事片付けないと帰れないっすもんね?」
「マジでぶん殴んぞ!」
「あ~パワハラ!怖い怖い!」
このやり取りも、最近の勝己の帰り際のルーティンになりつつある。
そんなルーティン、ハッキリ言っていらないが。
「じゃあ俺帰っから。なんかあったら呼べや」
自分の事務処理を終えた勝己は、パソコンを閉じると帰り支度を始めた。
「なんかあっても呼びませんよ~、ダイナマイトとカノジョの時間、邪魔したら後が怖いっすもん!」
「……てめぇ……いい加減にしとけや」
ジロリとサイドキックにガンを飛ばすと、「分かりましたよ、呼びますよ!なんかあれば!」とヘラヘラ言われてコイツはマジで分かってんのかという気持ちになってくるがそこは弁えている……はずだ。
「じゃあな」
「お気をつけて~、カノジョによろしくっす!」
もう一度てめぇと言いたい気持ちを抑えて、勝己は事務所を後にした。
帰り道を歩きながら勝己はサイドキックに散々イジられていた『カノジョ』について考えていた。
最近、忙しくて帰んのすげぇ遅くなっとったわ……
昨日は、泊まりで仕事だったしよ……
アイツ、何も言わねぇけどホントの所はどう思ってんだ?
ヒーローだからしゃーねえって諦めてるか、それとも……
まぁ……あれだ……早く帰れる時は、帰ってやるか。
そう結論付けた勝己は、自然と早足で家路へと向かっていた。
「あのっ、勝己さん!」
柄にもなく早く彼女に会いたいと思ってしまって急いでいた勝己を後ろから呼び止める声。
自分の事を名前にさん付けで呼んでくる人物なんて、世界中探してもたった1人しか今の所見当たらない。
「繭莉」
振り返ると、やっぱりそこには彼女……繭莉がいた。
「おかえりなさい、勝己さん。今日、早いですね」
こう言われて、笑顔を見せられるとなんとも言えずむず痒いような照れるような……いつもそんな気持ちになってしまう。
「あー……つぅかメッセ送ったろ」
