第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
昼休み。
昼食を摂った僕は、職員室の自分のデスクでぼんやりとコーヒーを飲んでいた。
この時の僕は、朝繭莉を思い出してしまった事で本当に気が抜けていたのかもしれない。
「みーどりやくん、久しぶり」
「えっ!?」
突然後ろから肩をポンと叩かれて、ビックリした僕はコーヒーカップを落としそうになってしまった。
「え、なに、そんな驚く?」
僕は、カップをデスクにそっと置きながら聞き覚えのある声の方に顔を向けた。
「ホークス……雄英に、用事ですか?」
「ん、そんな所かな。教頭先生に、呼ばれてさ」
「……そう、ですか……」
ホークスとは、あの日以来会ってなかった。
今思えば、どうしてこの人と同じ女の子を好きになったんだろうかという疑問がわいて出てくる時期もあったけど、最近ではそれも少しづつ薄れてきたところだった。
「ホントに久しぶりだね、緑谷くん」
そう言って壁にトンと背中を預けたホークスは、窓の外に視線を移した。
「どう?最近」
どうっていうのは、どういう事だろう。
単純に、最近の僕の調子を聞いているのか、それとも。
「……あの子の事、ですか?」
つい、質問を質問で返してしまった。
すると、ホークスは僕の方に振り返るとちょっと困ったような笑顔を見せた。
「あの子、ねぇ……今、どうしてるんだか」
「今日、たまたま生徒が話してるの聞こえちゃったんですけど……数学の先生となんとかなってるみたいですよ」
「え……それ、マジ……」
「分からないですけどね」
そう返した僕も、ちょっと困った笑顔をしているに違いない。
僕は、同じ女の子を好きになった人に、ひとつの疑問を投げかけた。
「繭莉の事……たまに思い出しちゃうんです。ホークスもそんな事あったり、しますか?」
それを聞いたホークスは、ちょっと困った笑顔のまま言った。
「思い出すもなにも、ずっと考えてる。あの子の事。女々しいおっさんだよねぇ……笑ってよ、緑谷くん」
「いえ……」
その答えにどんな顔をしていいか分からなくなった僕に、ホークスは続ける。
「きっとね、俺、あと3年は無理かな」
そう言って、ははっと笑ったホークスは僕の肩に手を置いた。
「ねぇ、緑谷くん。俺達って、あの子にとって何だったんだろうね」
僕は、その問いに答える事が出来なかった。
