【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第3章 When It Hurts to Love
「……バカ。」
小さく呟いた声は、賑やかな文化祭のざわめきにあっさりと消えた。
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交代の時間になって、仁美は人混みの中を探し回った。
黒尾が声をかけてくれたときの笑顔を思い出しながら、廊下、教室の前、屋台の列。いくつもの場所を歩き回る。
だけど、黒尾の姿は、どこを探しても見つからない。
ほんの少し前まで、「きっと、待っててくれる」と思っていた。
その当てが、音もなく外れた瞬間――胸の奥がすとんと沈んだ。
周囲ではクラスの呼び込みの声や、音楽や、楽しそうな笑い声が響いている。
さっきまではあんなに心地よかったこの喧騒が、今は、まるで別の世界の音みたいにうるさく感じられた。
「……行こ。」
仁美は屋台の前で軽食をひとつだけ買うと、人気の少ない校舎裏–––体育倉庫へと向かった。
ここは昔から、昼休みや放課後に誰も来ない“穴場”の場所だった。
倉庫のドアを開けると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。