【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第3章 When It Hurts to Love
年齢は少し上に見える。
きっと誰かの歳の離れた姉か、身内なのだろう。
一人で来ている一般来場者は珍しく、仁美は少し戸惑いながらも受付表を手に取った。
「こちらにご記入お願いします。」
彼女が名前を書き込むとき、ふわっと甘くて大人っぽい香水の匂いがした。
仁美はその匂いを嗅ぎながら、目線はペンを握る彼女の指をジッと見ていた。
薬指に光る結婚指輪がやたらと目に付いたのは、その指輪が少し彼女にとって大きかったからだ。
黒尾の方に視線を戻そうとして––––気づく。
彼はもう教室の中に戻っていた。
「……あ。」
返事をする間もなく、チャンスは指の隙間からこぼれ落ちていった。
仁美は受付表に視線を落としながら、胸の奥がふっと冷えるのを感じた。
さっきまで耳に残っていた黒尾の声。
交代したら一緒に回ろうという言葉。
それが、たった数十秒で遠いものになっていく。