【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第10章 Honeyed Threat
黒尾と向き合う重さと、研磨の声に揺れる自分。
どちらも嘘じゃない。
布団を握る手が震えた。
「……ほんとに……いいのかな…。」
『うん。俺を信じて。』
その瞬間、心が少し傾いた。
研磨の声は、いつだって冷静なのに、仁美を迷わせる優しさだけは隠さない。
沈黙が落ちる。
やがて、仁美はゆっくり立ち上がり、部屋の灯りをひとつ消した。
「……行くから。そこで待ってて。」
マンションの下へ降りる足は、罪悪感と期待の間で揺れながら、研磨の影へと向かっていった。
彼はいつものジャージに、いつもの姿勢で、ほんの少しだけ猫背のままスマホを握っていた。
その「変わらなさ」が胸に刺さる。
「……研磨。」
名前を呼ぶと、彼はゆっくり顔を上げた。
視線が触れた瞬間、仁美の目に涙がにじむ。
研磨は近づいてきて、仁美の顔に目を細めた。
「……クロより酷い顔してるね。」
全部見透かしているような研磨の言葉に、仁美は顔を俯かせた。
「研磨…私と会うの嫌じゃない?…私研磨にひどいことしたよね…。」