【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第10章 Honeyed Threat
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夜の静けさが、仁美 の部屋にやわらかく沈んでいく。
机に広げた参考書は、まるで別世界の遺物みたいに遠く見えた。
スマホが震える。
⸻研磨。
その文字が見えて一瞬、呼吸が止まった。
黒尾の顔が頭の中で揺れた。
でも指は勝手に画面を滑る。
通話を取ると、落ち着いた声が降りてきた。
『……仁美、いま下にいる。降りてきて。』
心臓が跳ねて、ベランダの外に視線を向ける。
暗がりのマンションの下、街灯の橙に染まった影。
そこに研磨が確かにいるのが分かった。
心臓が痛いくらいに締め付けられた。
「……ごめん、今は……会えないの。」
苦しくて、やっとの思いで声を絞る。
研磨は少しだけ息を吸う音を立てた。
『クロのことは気にしなくていいから。』
淡々としているのに、ふしぎな温度があった。
逃げ道をそっと灯すような声。
『仁美が来れない理由分かるけど……それでも、来てほしい。』
胸の奥にじんわり熱が広がる。