【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第10章 Honeyed Threat
久しぶりの体育館。
久しぶりのボールの感触。
久しぶりの“自分が自分に戻れる場所”。
序盤、黒尾のプレーは少しだけ硬かった。
筋肉の動きに違和感があり、踏み切りの感覚も微妙にズレる。
でも、一本。
また一本。
ボールが指先に正しく乗り始めた瞬間、黒尾の中の何かが弾けた。
「ナイス、ナイス。もう一本!」
後輩の声に手を上げて応え、ブロックに跳び、フェイントを拾い、レシーブを挙げ、声を、空気を、コートの温度を操っていく。
さっきまで、あれほど沈んでいた男とは思えないほど、黒尾は、バレーをしているときだけは、まっすぐで、潔くて、清い。
⸻
片付けが終わり、体育館の扉が閉まると同時に、黒尾の肩から一気に熱が抜けていった。
ベンチに座り、水を飲む。
視線は遠い。
その様子を見て、研磨はポツリと言った。
「……意外と持ったね…。」
黒尾は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに意味がわかると顔を赤くした。
「いや、別れてねぇし!!てかお前、俺たちが3日も持たないと思ってたわけ?!」