【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
スマホの画面に落ちた視線は、あまりに速くて——研磨以外、誰も気づかないだろう。
(……まただ。)
黒尾はすぐ笑い顔に戻り、「アイス買いに行くか」なんて軽く言っていた。
仁美は無邪気に頷く。
そこに翳りなんて一つもない。
だけど研磨の眼には、ほんの僅かな“違和感”が焼き付いた。
黒尾が隠している音が、微かに聞こえた気がした。
いつもと同じように振る舞ってるけど指先が、落ち着いてない。
黒尾は器用だ。
隠すのは上手い。
強いし、人に見せない。
けれど研磨は知っている。
黒尾鉄朗が、胸の内に何か抱えたときの目を。
たとえば、試合前に背負い込みすぎたとき。
たとえば、負けを認められないとき。
今回のそれは——
もっと深い、沈む色だった。
(……何をしてるの、クロ。)
問いかけは喉で止まる。
言わない。仁美には絶対に言わない。
ただ、静かに見ているだけ。
黒尾が何かを抱えて転びそうになる、その一歩手前を。
ああ、また。
クロの心がどこか行く音がする。