【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
仁美が今日の授業の愚痴をこぼし、黒尾は相槌を打つ。
研磨は時々聞いているのか分からない返事をする。
そのゆるい空気が心地よかった。
(楽だな……。)
こんな時間が、当たり前だと思っていた。
自分はこの日常の中で、ちゃんと立っているはずだと。
でも——
ポケットの中のスマホが振動して、胸の奥がざわつく。
《また殴られた》
短い文字。
痛々しい自撮りが一枚。
黒尾の指先が、微かに強ばる。
(……またかよ。)
怒りが喉を焼く。
《旦那と別れろ》
そう打つ。
無意識に、すぐ送っていた。
少し間が空いて、返信。
《無理だよ私はこの家庭を捨てられない》
そして続く。
《でも、鉄朗くんがいてくれるから大丈夫》
その言葉が胸の奥に絡みつく。
首を絞められているみたいに、息が苦しいのに、離れられない感覚。
(違うだろ。大丈夫じゃねぇよ。そんな言い方すんなよ……。)
隣で仁美が笑う。
「ねぇクロ、今日アイス食べて帰らない?」
黒尾は息を吸い、笑顔を作る。