第23章 夜叉椿
「…っ!」
反射的に領域を維持する。宿儺の圧が領域へぶつかる。バキッ。空間が揺れた。
「維持しろ」
「してる!」
「足りん」
さらに圧力が増す。領域が軋む。
「領域を広げるな。中心を固定しろ」
言われた通り、意識を一点へ集中する。崩れかけた領域が、再び安定した。ポト、ポトリ。水墨画で描かれた巨大な椿の木が現れた。宿儺の目が細くなる。
「…そうだ」
初めて、明確な肯定だった。
「今の感覚を忘れるな」
「できた…!」
「まだだ」
「今度は俺も領域を出す」
空気が一変した。圧倒的な存在感。思わず息を呑む。
「待って、私まだー」
「構えろ。領域の押し合いを経験しろ」
宿儺が手を組む。
「怖ければ目を逸らせばいい」
挑発するような笑み。
「だが、それでは一生領域は完成しないぞ」
悔しさを飲み込む。
「…逃げない」
宿儺の笑みが深くなる。
「それでいい」
2人の呪力がぶつかる。空間そのものが震え始める。
「領域展開!」
「領域展開『伏魔御厨子』」
ロロの領域は完璧に展開された。ポト、ポトリ。椿が一つまた一つ落ちる。ロロの姿が、夜叉椿の姿へと変わる。
「『天蓋落陽(てんがいらくよう)』」
ロロはそう言うと、天に右手を上げた。空に巨大な円環が広がり、そこから無数の光弾を降らせて、伏魔御厨子の斬撃と対峙する。宿儺はそれを見て、初めて満足そうに笑った。
「…宿儺、ありがと、う…」
そう言うと、ロロはその場に倒れてしまった。寝息が聞こえるので、寝てしまったようだった。
「…ん」
目を覚ますと、まだ宿儺の生得領域の中にいた。
「起きたか」
「…宿儺、…えっ!?」
ロロはガバっと起き上がる。なんと、宿儺の膝枕で寝ていたようだ。顔を赤くして、鬼のお面で顔を隠す。
「ケヒヒッ。ロロよ、お前の領域は夜叉椿の時の術が使えるみたいだな」
「そうだ!体も夜叉椿になった時、枷が外れたように軽くなった。昔のように術も使えた。やったー!」
ロロはガッツポーズをする。
「領域展開の中なら、私の得意な術もできるってことよね」
ロロは宿儺の方を見る。
「宿儺、最後まで付き合ってもらうからね!」
「はぁ、仕方ない」
頬杖をつきながら宿儺は答えた。