第16章 幼魚と逆罰
「でも僕は人間の醜悪さを知っています。だから、他人に何も期待していないし、他人の死に何も思う所はありません。『無関心』こそ人間の行き着くべき美徳です」
「そんな君が復讐ね」
「矛盾してるって言いたいんですか?」
順平は髪に隠れている右側を触る。
「順平は人に『心』があると思う?」
「え…、ないん…ですか?」
「ないよ。『魂』はある。でもそれは『心』じゃない」
「じゃあっ、僕のこの…」
「俺はこの世界で唯一、魂の構造を理解してる。それに、触れることで生物の形を変えているからね。喜怒哀楽は全て魂の代謝によるものだ。心と呼ぶには、あまりに機械的だよ。人は目に見えないモノを特別に考え過ぎる。見える俺にとって、魂は肉体と同じで何も特別じゃない。ただそこに在るだけだ。分かる?命に価値や重さなんてないんだよ」
順平から赤黒い物体を取り上げると、手で遊び出した。
「天地にとっての水の様に、命もただ廻るだけだ。それは俺も君も同じ。無意味で無価値。だからこそ、何をしてもいい。どう生きようと自由なんだ。『無関心』という理想に囚われてはいけないよ。生き様に一貫性なんて必要ない。お腹が減ったら、食べる様に憎いなら殺せばいい。俺は、順平の全てを肯定するよ」
そう言うと、真人は赤黒い物体を壊した。順平は静かに真人を見つめていた。
「順平の術式は『毒』だね。呪力から精製した毒を式神の触手から分泌する。毒の加減、式神のサイズや強度の可変はこれから覚えればいい」
順平の頭に両手を添えて、真人は続ける。
「普通の術師が時間をかけてつかむ感覚は俺が教えられるから、すぐに戦えるようになる。順平、才能あるよ」
小さなクラゲが順平の周りを漂う。真人の言葉に目を輝かせた。少しして、順平は真人と別れて家に帰ることにした。
ロロ達は順平の家周辺を張り込んでいた。すると。
「いました」
「アレ?私服?」
「高校には暫く行っていないみたいです」
「で、どうすんの?」
「これを使います」
そう言うと、伊地知は小さな檻を出してきた。なんと、檻の中には2体の呪霊が入っていた。
「『蝿頭』。4級にも満たない低級の呪いです。人気のない所に出たら、コイツに彼を襲わせます」
ロロと虎杖は驚いた。