第16章 幼魚と逆罰
「それは見ようとしないからです。私達は普段当たり前の様に、呪いを視認しています。術式を行使すれば、痕跡が残る。それが残穢。だが、残穢は呪霊などに比べ薄い。目を凝らしてよく見て下さい」
虎杖は言われた通りに目を凝らしてみる。薄っすらだが、残穢が感じられた。
「当然です。見る前に気配で悟って一人前ですから」
「もっとこう褒めて伸ばすとかさぁ…」
「褒めも貶しもしませんよ。事実に即し己を律するそれが私です。社会も同様であると勘違いしていた時期もありましたが、その話はいいでしょう。追いますよ」
「押忍!!気張ってこーぜ!!」
「いえ、そこそこで済むならそこそこで」
なかなか噛み合わない。ロロは苦笑いする。階段を上がりながら、虎杖が尋ねる。
「監視カメラには何も映ってなかったんだよね?」
「ええ。被害者以外は少年が1名のみです」
「じゃあ、犯人は呪霊?」
「まぁ、そうですね。あの少年がやった可能性もなくはないですが、そちらの身元特定は警察のー」
屋上に出ると、呪霊が3体いた。腕時計を付けた呪霊を七海が、あとの呪霊はロロと虎杖がそれぞれ相手することになった。
「勝てないと判断したら呼んで下さい」
「ちょっとナメすぎじゃない?俺達のこと」
「ナメるナメないの話ではありません。私は大人で君達は子供。私には君達を自分より優先する義務があります」
「ガキ扱いなら、ナメられた方が良かったよ」
「君達はいくつか死線を越えてきた。でもそれで、大人になったわけじゃない。枕元の抜け毛が増えていたり、お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり。そういう小さな絶望の積み重ねが、人を大人にするのです」
色々大変だったんだなとロロは思う。
「私の術式は、どんな相手にも強制的に弱点を作り出すことができます。7∶3。対象の長さを線分した時、この比率の『点』に攻撃を当てることができれば、クリティカルヒット。私より格上の者にも、それなりのダメージを与えることができますし、呪力の弱い者であれば、このナマクラでも両断できます。聞いていますか、鬼住さん、虎杖君」
「あっ!!俺達に言ってたの!?そういうのってバラしていいもんなの?」
呪霊に集中したいけど、話も聞かなきゃダメっぽい雰囲気に、虎杖はキョロキョロと左右を見る。