第11章 ある夢想
牛の頭蓋骨が敷き詰められている頂に宿儺が鎮座していた。
「許可なく見上げるな。不愉快だ、小僧」
「なら、降りてこい。見下してやっからよ」
虎杖が動いて水面が波紋する。
「随分と殺気立っているな」
「当たり前だ。こちとらお前に殺されてんだぞ」
「はぁ〜あ、腕を治した恩を忘れるとはな」
「その後心臓取っちゃったでしょーが!!死んでまでテメェと一緒なのは納得いかねぇけど。ここ地獄か?丁度いいや、泣かす」
そう言うと、虎杖は牛の頭蓋骨を掴むと宿儺に向けてぶん投げた。それを華麗に避けた宿儺は、巨大な肋骨の上に降り立つ。
「歯ぁ食いしばれ」
「必要ない」
後を追って来た虎杖と宿儺が拳を振りかざす。が、虎杖の狙いは足場だった。バランスを崩した宿儺に虎杖が足蹴りを入れようとする。
「アレ?」
「お前はつまらんな」
空振りした虎杖を下へと蹴り落とすと、宿儺は虎杖の上にのしかかる。
「ここはあの世ではない。俺の生得領域だ」
意味がわかってない虎杖を宿儺は一瞥する。
「バカめ。『心の中』と言いかえてもいい。つまり、俺達はまだ死んでいない。お前が条件を呑めば、心臓を治し生き返らせてやる」
「偉っそうに。散々イキっといて結局テメェも死にたくねぇんだろ」
「事情が変わったのだ。近い内、面白いモノが見れるぞ。条件は2つ。①俺が『契闊』と唱えたら、1分間体を明け渡すこと。そして、②この約束を忘れること」
「駄目だ。何が目的か知らねぇがキナ臭すぎる。今回のことでようやく理解した。お前は邪悪だ。もう二度と体は貸さん」
「ならば、その1分間誰も殺さんし傷つけんと約束しよう。これでいいだろう。はー、うざ」
「信じられるか!!」
「信じる信じないの話ではない。これは『縛り』誓約だ。守らねば罰を受けるのは俺。身に余る私益をむさぼれば報いを受ける。それは、小僧が身をもって知っているはずだ」
この前はうまくいったのは宿儺も利害が一致していたからだ。
「…分かったどいてくれ。条件を呑む。何がしてぇのかよく分からんけど、まぁ生き返るためだしな」
虎杖の上から退いた宿儺の頬を殴る。無条件で生き返らせろと虎杖は宿儺に言う。
「…では、こうしよう。今から殺し合って小僧が勝ったら無条件で、俺が勝ったら俺の縛りで生き返る」
「『いいぜ』ボコボコにー」
キンッと響き渡る。
