第9章 呪胎戴天
『誰かを呪う暇があったら、大切な人のことを考えていたいの』
津美紀は、疑う余地のない善人だった。誰よりも幸せになるべき人だったのに、それでも津美紀は呪われた。
因果応報は全自動ではない。悪人は、法の下で初めて裁かれる。呪術師はそんな『報い』の歯車の1つだ。少しでも多くの善人が平等を享受できる様に、不平等に人を助ける。
伏黒は覚悟を決めて、両手を前に出す。
「いい。いいぞ。命を燃やすのはこれからだったわけだ。魅せてみろ!!伏黒恵!!」
「布瑠部由良由良八握ー」
何かを感じた伏黒は、途中で台詞を言うのを止めた。
「…俺は、お前を助けた理由に論理的な思考を持ち合わせていない。危険だとしても、お前の様な善人が死ぬのを見たくなかった。それなりに迷いはしたが、結局は我儘な感情論。でも、それでいいんだ。俺は正義の味方じゃない。呪術師なんだ。だから、お前を助けたことを一度だって後悔したことはない」
「…そっか」
虎杖がかえってきた。
「伏黒は頭がいいからな。俺より色々考えてんだろ。お前の真実は正しいと思う。でも、俺が間違ってるとも思わん。あー、悪い。そろそろだわ。鬼住も伏黒も釘崎も、五条先生…は心配いらねぇか。長生きしろよ」
そう言うと、虎杖は絶命した。
高専内にある霊安室に虎杖は運ばれた。そこに、五条と伊地知がいた。
「わざとでしょ」
「と、仰いますと」
「特級相手。しかも生死不明の5人救助に、ロロがいたとしても1年派遣はあり得ない。僕が無理を通して悠仁の死刑に実質無期限の猶予を与えた。面白くない上が、僕のいぬ間に特級を利用して、体良く彼を始末ってとこだろう。他の2人が死んでも、僕に嫌がらせができて一石二鳥とか思ってんじゃない?」
「いやしかし、派遣が決まった時点では本当に特級に成るとは…」
「犯人探しも面倒だ。上の連中、全員殺してしまおうか?」
「珍しく感情的だな。随分とお気に入りだったんだな、彼」
家入が現れた。
「僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ」
「あまり伊地知をイジメるな。私達と上の間で苦労してるんだ」
「男の苦労なんて興味ねーっつーの」
「そうか。で、コレが宿儺の器か。好きに解剖していいよね」
「役立てろよ」
「役立てるよ。誰に言ってんの」
家入は解剖する準備をし始めた。