第9章 呪胎戴天
「しかしまぁ、それも時間の問題だろ。そこで、俺に今できることを考えた」
宿儺はビリビリと制服を破ると、胸に手を突っ込む。
「小僧を人質にする」
心臓を取り出すと、地面に投げた。
「俺は心臓なしでも生きていられるがな。小僧はそうもいかん。俺と代わることは死を意味する。更に、駄目押しだ」
宿儺は先程、手に入れた自分の指を飲み込む。
「さてと、晴れて自由の身だ。もう脅えていいぞ。殺す。特に理由はない」
ロロは割れたシーサーのお面を口元に持ってくる。すごく好みだ。宿儺のことを見つめるロロ。
「虎杖は戻ってくる。その結果自分が死んでもな。そういう奴だ」
「買い被り過ぎだな。コイツは他の人間より多少頑丈で鈍いだけだ。先刻もな、今際の際で脅えに脅えゴチャゴチャと御託を並べていたぞ。断言する。奴に自死する度胸はない」
伏黒が戦闘モードに入る中、ロロは宿儺に夢中だった。宿儺の一挙手一投足、愛おしく思えた。これが恋なのだろうか。
「折角外に出たんだ。広く使おう」
宿儺は前髪をかき上げた。伏黒は術式で鵺を出すと、宿儺に向かって走り出す。戦闘の邪魔にならないように、ロロは木の陰に隠れた。
「もっと呪いを篭めろ」
伏黒の拳を受け止めると、宿儺は伏黒の顔面を殴る。すかさず、伏黒は大蛇を出す。大蛇は宿儺を咥えると空へと伸びる。
「畳み掛けろ!!」
鵺が飛んできて宿儺に攻撃をくわえるがあまり効いてないようだ。ニヤリと宿儺は笑い、大蛇を真っ二つにした。
「言ったろう。広く使おう」
宿儺は伏黒の服を掴むと、投げた。
「恵っ!!」
伏黒のあとを追って宿儺も空高く飛ぶ。宿儺の打撃を鵺で防いだ伏黒は吹っ飛ぶ。ああ、宿儺が行ってしまう。ロロは2人のあとを追った。
「お前の式神、影を媒体にしているのか」
「ならなんだ」
「フム、分からんな。お前あの時、何故逃げた」
言っている意味が分からず、疑問符を浮かべる伏黒。
「宝の持ち腐れだな。まぁいい。どの道、その程度では心臓は治さんぞ。つまらんことに命を懸けたな。この小僧にそれ程の価値はないというのに」
不平等な現実のみが平等に与えられている。伏黒はある人物を思い出していた。伏黒の義理の姉、伏黒津美紀だ。