第9章 呪胎戴天
「この遺体持って帰る。あの人の子供だ。顔はそんなにやられてない。遺体もなしで『死にました』じゃ納得できねぇだろ」
伏黒が虎杖の肩を掴む。
「あと2人、生死の確認しなきゃならん。その遺体は置いてけ」
「振り返れば来た道がなくなってる。後で戻る余裕はねぇだろ」
「『後にしろ』じゃねぇ『置いてけ』っつったんだ。ただでさえ助ける気のない人間を、死体になってまで救う気は俺にはない」
「どういう意味だ」
虎杖は伏黒の胸ぐらを掴む。ここは少年院。呪術師には現場のあらゆる情報が事前に開示される。岡崎正は、無免許運転で下校中の女児をはねているのだ。それも2度目の無免許運転でだ。
「お前は大勢の人間を助け、正しい死に導くことに拘ってるな。だが、自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」
「じゃあなんで、俺は助けたんだよ!!」
「いい加減にしろ!!時と場所をわきまー」
虎杖と伏黒の言い争いを止めようと、釘崎が前に出た。すると、釘崎が地面に吸い込まれる。ロロが釘崎の手を掴もうとするが、ピタリと止まる。隣にいた玉犬がやられた。
「悠仁、恵!!特級が現れた!!」
ロロが叫ぶ。虎杖と伏黒の目の前に特級が姿を出した。ロロはシーサーのお面をつけて、特級を蹴る。特級は吹っ飛び、壁にあたる。
「劣化してたか…」
シーサーのお面が割れてしまった。
「私は役立たずになった。早く逃げるよ!」
ロロがそう言った瞬間、特級が襲いかかってきた。それを虎杖が庇い、左手を失ってしまう。特級はケタケタと笑っている。
「鬼住、伏黒!!釘崎連れて領域から逃げろ!!3人が領域を出るまで俺が特級を食い止める。出たら何でもいいから合図してくれ。そしたら、俺は宿儺に代わる」
「できるわけねぇだろ!!特級相手に片腕で!!」
「よく見ろって。楽しんでる。完全にナメてんだよ。俺達のこと。時間稼ぎぐらいなんとかなる。鬼住、伏黒!頼む」
ロロは伏黒の肩に手を置く。伏黒は唇を噛んだ。釘崎を探す為に玉犬(クロ)を出して、ロロと伏黒は走り出す。