第9章 呪胎戴天
「我々の『窓』が呪胎を確認したのが、3時間程前。避難誘導9割の時点で、現場の判断により施設を閉鎖。『受刑在院者第2宿舎』5名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており、呪胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊に成ると予想されます」
補助監督の伊地知潔高が説明をする。
「なぁなぁ、俺特級とかまだイマイチ分かってねぇんだけど」
虎杖が尋ねる。通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、4級は木製バットで余裕。3級は拳銃があればまあ安心。2級(準2級)は散弾銃でギリ。1級(準1級)は戦車でも心細い。特級はクラスター弾での絨毯爆弾でトントン。
「本来、呪霊と同等級の術師が任務に当たるんだ。今日の場合だと、五条先生とかな」
「で、その五条先生は?」
五条は出張中らしい。この業界は人手不足が常。手に余る任務を請け負うことは多々あることだ。ただ今回は、緊急事態で異常事態なのだ。
「『絶対に戦わないこと』特級と会敵した時の選択肢は『逃げる』か『死ぬ』かです。自分の恐怖には、素直に従って下さい。君達の任務はあくまで、生存者の確認と救出であることを忘れずに」
面会に来ていた母親が声をかけてきて、伊地知が対応してくれた。子供の名前は正というらしく、涙を流す母親を見た虎杖は、助けると意気込んだ。そんな虎杖をロロは静かに見つめた。
「『帳』を下ろします。お気をつけて。『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』」
「夜になってく!」
「『帳』今回は住宅地が近いからな。外から俺達を隠す結界だ」
伏黒は術式で玉犬を出す。
「呪いが近づいたらコイツが教えてくれる。行くぞ」
中に入ると、建物が入り組んでいた。ロロは後ろを振り返ると、扉がなくなっていた。呪力による生得領域の展開である。
「扉がなくなったわ」
それを聞いた3人は振り返る。虎杖と釘崎はどうしようと踊り出した。
「大丈夫だ。コイツが出入口の匂いを覚えている」
伏黒は玉犬を見る。
「わしゃしゃしゃしゃしゃしゃ」
「ジャーキーよ!!ありったけのジャーキーを持ってきて!!」
「緊張感」
ロロはシーサーのお面を顔にかざして笑う。
「やっぱり頼りになるな、伏黒は。お前のおかげで人が助かるし、俺も助けられる」
「…進もう」
進んだ先には遺体が3体転がっていた。