第4章 懐玉
祓う。取り込む。その繰り返し。
祓う。
取り込む。
皆は知らない。呪霊の味を。吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしている様な。
祓う。
取り込む。
誰のために?あの日から、自分に言い聞かせている。夏油が見たものは、何も珍しくない。周知の醜悪。知った上で夏油は、術師として人々を救う選択をしてきたはずだ。ブレるな。強者としての責任を果たせ。
あの集団達の拍手が、どうしても脳裏から離れない。
「猿め…」
ポツリと夏油は言う。
「あ!!夏油さん!!」
自動販売機のある所で座っていると、灰原が現れた。
「何か飲むか?」
「えぇ!?悪いですよ。コーラで!!」
「フフッ…」
コーラを買うと、灰原もベンチに座る。
「明日の任務、結構遠出なんですよ」
「そうか。お土産頼むよ」
「了解です!!甘いのとしょっぱいのどっちがいいですか?」
「悟も食べるかもしれないから、甘いのかな。…灰原、呪術師やっていけそうか?辛くないか?」
夏油は真っ直ぐ前を見たまま、灰原に尋ねた。
「そー…ですね。自分はあまり物事を深く考えない性質なので。自分にできることを精一杯頑張るのは、気持ちがいいです」
「そうか」
「君が夏油君?どんな女が好みかな?」
灰原と話をしていると、1人の女性が声をかけてきた。
「どちら様ですか?」
「自分は沢山食べる子が好きです!!」
「灰原…」
「大丈夫ですよ。悪い人じゃないです。人を見る目には自信があります」
「…私の隣に座っておいてか?」
「?…ハイ!!」
皮肉も灰原には通じなかった。空気を呼んで灰原は退出した。
「後輩?素直でカワイイじゃないか」
「術師としてはもっと人を疑うべきかと」
「で、夏油君は答えてくれないのかな?」
「まずはアナタが答えて下さいよ。どちら様?」
「特級術師、九十九由基。って言えば分かるかな?」
「アナタがあの…!?」
「おっ、いいね。どのどの?」
特級のくせに任務を全く受けず、海外をプラプラしてるろくでなしのと伝えると、九十九は高専嫌いと拗ねてしまった。
「冗談。でも高専と方針が合わないのは本当。ここの人達がやってるのは、対症療法。私は原因療法がしたいの」
「原因療法?」
呪霊を狩るのではなく、呪霊の生まれない世界をつくろうということだ。少し授業をしようかと、九十九が言った。