第4章 懐玉
「虚式『茈』」
違和感。
タダ働きなんてゴメンだねって、いつもの甚爾ならそう言ってトンズラしていた。だが、目の前には覚醒した無下限呪術の使い手、恐らく現代最強と成った術師。否定したくなった。捻じ伏せてみたくなった。甚爾を否定した、禪院家、呪術界その頂点を。自分を肯定するために、いつもの自分を曲げてしまった。その時点で、負けていた。
「自尊心は捨てたろ」
五条の攻撃を受けて、甚爾の左側が欠けていた。
「最後に言い残すことはあるか?」
「…ねぇよ」
一度そう言ったが、脳裏に息子の顔が浮かぶ。
「2、3年もしたら俺の子供が禪院家に売られる。好きにしろ」
そう言うと、甚爾は立ったまま絶命した。
ロロが目を覚ますと保健室にいた。近くのテーブルには、割れた鬼のお面とシーサーのお面が置かれていた。ロロは割れた鬼のお面を手元に持ってくると、大笑いした。
「あはははは。兄者、初めて負けちゃったよ!夜叉椿の時は負け知らずだったあの私が!あー、楽しい!楽し過ぎる!!…ねぇ、聞いてる、兄者?」
惣闇からの返事がない。割れてしまったら、もう連絡が取れないみたいだ。ロロはシーサーのお面を手にとる。
「もしもし兄者、聞こえる?私負けちゃったってとこ聞こえてた?聞こえてないか〜」
今まであったことを惣闇に話す。
「へぇ〜、知らなかった。もし本気出してたらお面割れてたんだ」
お面の強度が本気に耐えられないそうだ。注意しないと。
「悟が気になるから、兄者私行くね」
家入の反転術式のおかげでどこも痛くない。シーサーのお面を首から下げると、ドアを開ける。ちょうど夏油と鉢合わせした。ロロの見舞いに来たのだろうか。
「傑も大丈夫そうね。悟は?」
どこにもいないそうだ。もしかしたら、反転術式を取得したのかもしれない。天内の遺体を回収するために、ロロ達は考える。都内にいくつも盤星教の施設があるからだ。
「兄者が、本部に行ったらって言ってる」
夏油はロロを見る。シーサーのお面とまだ話しをしていた。まずはそこに行くことにした。