第4章 懐玉
「星漿体がいねぇな。できれば、五条悟はさっきので仕留めたかったんだが…。ナマったかな」
「天内の懸賞金はもう取り下げられたぞ。マヌケ」
「俺が取り下げたんだよ。ヤセ我慢。お前みたいに隙がない奴には、緩急つけて偽のゴールをいくつか作ってやるんだ。周りの術師が1人も死ななかったのはクソだったが、懸賞金の時間制限がなければ、お前は最後まで術式解かなかったと思うぜ」
「あっそ」
「うるさい」
五条は術式で遠ざけると、ロロは近くにあった岩を持ち上げて投げる。だが、甚爾が速くて当たらない。
「悟、アイツ何?」
「コイツ何かおかしいと思ったら、呪力が全くない。天与呪縛のフィジカルギフテッドだ。動きがまるで読めねぇ!!」
甚爾は体に巻いている呪霊からまた武器を2つ出すと、ものすごいスピードでこちらに向かってくる。五条が術式で建物の方に投げた。
「虎の子か?残念寄らせねぇよ」
もう姿がなかった。呪力がないから気配も読めない感頼りなわけじゃない。甚爾に巻きついている、物を出し入れできる呪霊の気配を追えばいい。移動速度が速い。
「仕方ねぇな。術式順転、出力最大『蒼』」
そう言うと、五条は自分中心に術式で円を描く。建物が次々と壊れていき、遮蔽物がなくなる。
「森に隠れたわね」
「ああ」
森の方から何か飛んで来た。蠅頭だ。周りを囲まれた。あの呪霊の中に飼っていたみたいだ。
「蠅頭をチャプみてぇに使おうってわけね」
これじゃ甚爾がどこにいるのか分からない。
「くっ…」
甚爾からの蹴りを受けて、ロロが吹っ飛んだ。
「ロロ!」
手ぶらの甚爾も気取る感のよさ。この特級呪具、天逆鉾から滲み出る異質な呪力を、六眼を持つ五条が見落とすわけがないし、ビビって寄らせることもない。だが、ようやく術式頼りの守りに回ったな、ニヤリと甚爾が笑う。
振り返ると、五条の首に天逆鉾が刺さっていた。天逆鉾の効果は、発動中の術式強制解除だ。甚爾は連続攻撃で五条をメッタ刺しにしていく。最後にナイフで頭を刺す。
「少し、勘が戻ったかな」
「悟…?」
血まみれで倒れている五条を見つめる。
「女だからって手加減しないぜ」
「貴様っ!!」
やはり甚爾の方が少し速い。だんだん押されぎみになる。ナイフの跡がみるみる広がり、お面が割れてしまった。