第101章 波乱の食事会〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
「あらあら、無一郎くん甘えん坊さん」
甘露寺が頬を染めて微笑む中、伊黒がすかさず不死川に耳打ちをした。
「部屋を用意してやったらどうだ。酒はまだ時透には早すぎたんだろう」
「…あァ、わかった」
不死川は隠を呼びに席を立つが、その胸中は複雑に揺れていた。無一郎とゆきの関係は、とうに認めていたはずだった。だが、ここ最近、毎日のように屋敷へ通い、兄のように自分を慕ってくれるゆきと過ごすうちに、胸の奥に眠っていた彼女への恋心が再び目を覚ましていくのを、不死川は自覚せずにはいられなかったからだ…。
自分の母親の形見を纏い、今は別の男の腕の中にいる愛しい人…。
やるせない想いを隠すように、不死川は隠に部屋の手配を厳しく命じた。
「俺達も帰ろうか」
「そうですね、伊黒さん。…冨岡さんも、一緒に帰りましょう?」
甘露寺の優しい声に、義勇はゆっくりと立ち上がった。だが、その視線は部屋の隅から離せない。
無一郎の胸元に重なったままのゆき。彼女は、抱き締められたまま、俺の視線を避けているように感じた。
かつて、お前のその身体のすべてが自分だけのものだった極上の記憶…。
彼女の肌の温もりが義勇の記憶を焦がす…。
不死川は、母親の形見をゆきに纏わせている。
無一郎は、婚約者としてゆきに触れている。
俺は…
ただ一人、かつての心通い合わせた自分だけが、何ひとつ触れることを許されない。
「…先に行く」
義勇は小さく呟くと、時透に抱きしめられるゆきを見ながら部屋を出た。
障子が閉まる直前、浴衣が擦れる音と共に、ゆきが小さく切なげに息を呑む気配がした。
不死川も時透も…俺も、ゆきを狂おしいほどに愛している。
その事実が、この食事の席で今日はっきりとわかった…。