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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎 冨岡義勇★R18

第102章 刀鍛冶の里での罠〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】


夜が明けた頃、ゆきは冷え切った体を引きずるようにして宿に戻った。

部屋の襖をそっと開く。…無一郎の姿はない。ということは、やはりまだ美月の部屋にいるのだろう。

昨夜からずっと、彼女をその腕に抱いたまま夜を明かした事をゆきは悟った。

激しい涙の後は、ただ深い疲労感がゆきを襲った…。

衣服を整える気力すら湧かず、ゆきは冷え切った身体を温めるように布団に潜り込んだ。

少しだけ眠ろう。何もかも忘れて、ただ眠ってしまいたかった。

どれほど眠っていたのだろう。薄暗い意識の底からゆっくりと目を開けると、すぐ目の前に、心配そうな顔をしてこちらを覗き込む無一郎がいた。

「ゆき、目が覚めた…?」

その声は優しく、昨夜の冷たさが嘘のようだった。

無一郎はそっと手を伸ばし、ゆきの頬に残る簪の傷跡に指先で触れる。

微かに眉をひそめる彼の表情には、確かにゆきを案じる色が浮かんでいた…。

けれど、次に彼の口から零れた言葉が、ゆきの心を凍りつかせる…。

「…その傷、美月の簪でついたんだよね。ねえ、本当に…簪は隠してない?」

向けられた瞳はどこまでも真っ直ぐで、だからこそ残酷だった。

頬の傷を心配しながらも、無一郎は自分を疑っている。

私が嘘をついて隠しているのではないかという疑念…。

 無一郎くんは…美月の言葉を信じているの?

濁した私も悪いけど簪を隠す訳がない…わかるよね?

美月の「盗まれた」という言葉だけを、彼は心から信じ込んでいる。

「隠してない…信じてくれないならもういい!」

ゆきは、無一郎の手を払い除けた。

「…君がそう言う態度をいつまでも取るなら僕にも考えがある。」

無一郎は、立ち上がりゆきを見下ろす。

「君が美月を、苦手に思っている事は知っている。だけど一応あの子は僕の大切な継子だ。」

「だから、何?大切なら私じゃなくて美月さんと婚約すれば?立派な剣士だし…私みたいな出来損ないなんて捨てればいいのよ!」

無一郎は、思わずまたゆきの頬を叩いてしまった。

簪の傷口が開き新たに血が流れ落ちる…

ゆきは、部屋を飛び出した。

無一郎の手が震える…追いかけたいのに足が動かない…。

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