第101章 波乱の食事会〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
義勇が食事の席に戻ると、部屋の隅で横になり、介抱されている無一郎の姿が目に入った。
「ゆきちゃん、お水をもらいに行ってから遅いわねぇ?」
甘露寺が、間違えてお酒を飲んでしまった無一郎を心配そうに扇ぎながら、ゆきの帰りを待っていた。その横から伊黒が、席につこうとする義勇に鋭い視線を向ける。
「冨岡、ゆきは見なかったか?」
「…もう戻ってくる」
それだけ答えると、胸の燻りを誤魔化すように、再び手元の酒を煽った。
喉を焼く熱さは、先ほどまで目の前にいたゆきの、愛おしい肌の温もりを思い出させる。
かつては深く愛し合い、その身体のすべてを知り尽くした、かけがえのない存在。だが、今のゆきは自分のものではない。横たわる無一郎こそが、「正真正銘の婚約者」なのだから…。
「う〜ん…」
無一郎が目を閉じたまま、苦しそうに身体を捩ったその時、部屋の障子が開いた。ゆきが、水を張った桶を抱え、不死川と共に戻ってきたのだ。
「あら? ゆきちゃん、お着替えしたの?」
甘露寺が不思議そうに声を上げる。ゆきが身に纏っていたのは、仕立ての古びた、しかし丁寧につくられた美しい女性ものの着物だった。
「あ、あァ…!」
不死川が、珍しく動揺を隠せない様子で慌てて口を開いた。
「こいつァ、水を汲むときにドジ踏んで頭から被っちまいやがったんだァ。だから…俺のお袋の、形見の着物を貸した」
その言葉に、義勇の持つ猪口がぴくりと震えた。
いつも荒々しい不死川が、婚約者のいる身であるゆきを、どれほど特別に想い、一人の女性として大切に扱っているか。その重い愛が、形見の着物を貸すという行為を、通して痛いほどに伝わってくる…。
ゆきは顔を赤らめ、俯いたまま婚約者である無一郎の元へと急ぎ、その額を濡れ手拭いでそっと拭った。
しかし、ふと視線を感じて…義勇の方を見た。
じっと、そらさずにゆきを見つめていた…。
「う〜ん…」
無一郎が、ゆきの着物の袖を掴み不意に自身に引き寄せた。
バランスを崩したゆきは、無一郎の胸元に倒れ込む…。
そして皆の前で、無一郎に抱きしめられた。
「ちょ、ちょっと…む、無一郎くん?」
愛おしそうに抱きしめ離す素振りはない…。