第101章 波乱の食事会〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
「ゆきが、嫌がっている。早く部屋から出ろ、不死川」
義勇はすかさず、驚きに固まるゆきの前に割って入り、不死川を遮るように立ちはだかる。
背中を向けて自分を庇う義勇の姿に、ゆきの胸はズキリと痛んだ。
今はもう、柱と継子という関係ではない。けれど、かつて互いを深く愛し合い、幾度も肌を重ね、その心の隅々までを知り尽くした記憶が、鮮烈に蘇ってくる…。
「あァ? どの口がほざいてやがる、冨岡ァ」
不死川は額に青筋を浮かべ、低い声で威嚇するように義勇を睨みつけた。
「てめェが、約束破ってゆきにちょっかい出すからこんな事になってんだろォがよ」
「そ、それは…すまないとは思っている…。だが…」
「てめェがいる方がゆきは着替えられねぇんだよ。邪魔だ、さっさと失せろ」
苛立ちを隠そうともしない不死川の言葉に、義勇は表情をキリッと変え、さらりと言い放った。
「お前には悪いが、俺はゆきのことは隅々まで知っている…着替えをじっと見てゆきの嫌がるような真似などしない」
「なっ…!」
そのあまりにも直球な言葉に、ゆきは顔が火を吹くほど真っ赤になった。
かつて愛し合った日々の、甘く切ない記憶がまた脳裏を駆け巡る…。
確かに義勇さんは、自分の身体のすべてを知っている…。
けれど、それを今、この状況で、しかも不死川さんの前で口にするなんて。
「…テメェ、何言ってやがる…!」
不死川の纏う空気が一瞬で殺気へと変わる。しかし、義勇の瞳にあるのは挑発ではなく、ただひたすらに、ゆきを他者の視線から守りたいという、不器用で、一途なまでの切ない想いだった。
「あ、あの!お二人とも出てください!一人で着替えれますから!それに、早く戻らないと…他の方に変に思われます!」
ゆきは、そう告げると義勇の背中を押して部屋の外へと追い出した。
廊下に、追い出された二人…
不死川が、ふと義勇を見る…。
「冨岡ァ…お前、結構酔ってるな?」
「煩い…」
「いつも寡黙だろォが…なのに、感情抑えれねェでゆきに…あんな事しやがって。」
義勇は、少しふらつきながら歩き出した。
「先に戻っておく」
不死川は、そんな義勇の背中を何とも言えない気持ちで見届けた…。