第101章 波乱の食事会〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
席に着いてからずっと無一郎くんの指先が、私の着物の裾をきつく握りしめている。
「無一郎くん…私はどこにも行かないから、離して」
周囲に聞こえないよう、そっと耳打ちした。けれど首を横に振る。
「だめ。離さない」
賑やかな宴の席…
甘露寺が楽しげに笑い、不死川が不機嫌そうに酒を煽るその空間で、無一郎は食事の合間もゆきの右側を完全に陣取り、ゆきの視線が「義勇」に向くのを遮るように甲斐甲斐しく料理を取り分けてくれていた。
しかし、その必死さが仇となった。
「…ん」
私を見つめたまま、無一郎は手探りで膳の上の器を持ち上げ、躊躇いなく口に含んだ。
「あ、時透お前、それ俺のォ!」
不死川の鋭い声が響いた時には、もう遅かった…。
無一郎が間違えて口にしたのは、不死川の手元にあった度数の強い地酒だったのだ。
「あれ?これお酒?けど結構いけるかも?」
そう言って無一郎は、立て続けに二、三杯いっきに飲み干してしまった。
「お、おい…大丈夫かよォ?」
心配する不死川をよそに案の定無一郎は酒が回りカラン、と器を手から落とした。
「あれ?…ゆき、なんか、ふわふわする…」
真っ赤になった顔でゆきの肩に頭を預けてきたかと思うと、無一郎はそのまま気持ち良さそうにすうすうと眠りに落ちてしまった。
「ったく、ガキだなァ飲めねェなら手ェ出すなよ!」
頭を掻く不死川に「すみません!」と謝りながら、ゆきは慌てて無一郎の体を支えた。
彼の乱れた前髪を優しく払い、懐から取り出した手ぬぐいで、汗ばんだ額をそっと拭う。
倒れそうになる体を片手で抱きとめ、零れたお酒が隊服に染みないよう、甲斐甲斐しく彼の世話を焼いた。
「無一郎くん大丈夫しら?ゆきちゃん、お水もらう?」
甘露寺が心配しながらも二人を微笑ましく見守る中、ふとゆきは、背中に刺さるような視線を感じて動きを止めた…。
部屋の隅、影の落ちる場所に座る義勇
お猪口を握りしめたまま、ゆきが無一郎を抱きすくめるように介抱する姿をじっと見つめていた。
ゆきは、その視線をさけるかのように冷たいお水を桶に貰うために食事の席を立ち台所へ向かった。