第111章 届かない手紙〜冨岡義勇【微R】
ゆきの小さく震えるお腹に、義勇の大きな手がそっと重ねられる。その掌から伝わる熱に、ゆきは身体を強張らせた。
「俺は、お前が時透の婚約者で、あいつと肌を重ねていることも承知している。…承知の上で、お前を好いているからだ。だが、時透の思いは、俺とは少し違うのではないかと思う……」
追い打ちをかけるような残酷な事実に、ゆきの目から再び溢れ出た涙が、とどまることなく頬を伝い落ちる。
「ど、どうしよう…私……こんな取り返しのつかないこと…」
「あいつは今、命を賭した大変な任務の途中だ。…今はまだ、告げるべきではない」
「…義勇さん…私、無一郎くんにも、義勇さんにも…もうどちらにも顔向けなんてできません」
胸を切り裂かれるような絶望に耐えかね、ゆきはすり抜けるように義勇の腕の中から身を引いた。ぽっかりと空いた胸の隙間に冷たい空気が流れ込む。
「私は…なんて汚らわしい…」
「ち、違う! あれは俺の意思でお前を抱いたんだ! お前はただ媚薬に惑わされ、理性を奪われていただけだ…! 。決して汚らわしくなどない!」
義勇が差し伸ばした手すら拒むように、ゆきは頭を抱えて縮こまった。
過呼吸を起こしたように浅く速い呼吸が繰り返し胸を上下させる。
「落ち着け! 大丈夫だ、ゆき…!」
義勇は取り乱すゆきの肩を優しく掴み寄せる。
逃げ場を失ったゆきを再びその胸の中へと深く引き寄せると、自身の拍動を聞かせるように強く抱きしめた。
「自分を責めるな。責めるなら俺を責めろ。お前は、何も悪くない…俺がお前を好いていて求めた。ただそれだけだ…。」
耳元で切々と囁かれる義勇の言葉と、力強い鼓動。
無一郎への罪悪感と義勇の深い情愛の狭間で、ゆきはただ声を上げて泣き続けることしかできなかった。
あんなに、無一郎くんに会いたかったのに…今は会うのが怖くて堪らない…。
自分が犯した罪に、ゆきは押しつぶされそうになっていた。