第111章 届かない手紙〜冨岡義勇【微R】
義勇はそう告げると、手紙を持ったまま静かに背を向けた。
「返して! 義勇さん!」
感情を抑えきれないゆきは必死で後を追い、義勇の羽織の裾を力任せに掴んだ。
突っ張る衣服の感触とともに、義勇はその場で足を止める。
振り返った義勇は、ゆきの手首を素早く掴み取ると、難なくその動きを制止させた。
「義勇さんに何の権限があって手紙を取るんですか? お願い、返してください!」
涙で視界を濡らしながら必死に訴えかけるゆき…その声を遮るように、義勇は突然身を寄せた。
ふわりと重なる唇の感触。
「……!?」
あまりの出来事に、ゆきは驚きで目を見開いた。
強引でありながらどこか切ない接触を終え、義勇がゆっくりと顔を遠ざける。
その瞳は、限りなく優しかった…。
義勇には分かっていた。
先ほど銀子が落としていった手紙の宛名。
そこに記された筆跡は、寄せて書いているが明らかに無一郎のものではない。
鬼殺隊の水柱として、任務の報告書などで無一郎の字を見慣れている義勇だからこそ気づけた、わずかな違和感だった。
…美月あたりが送ってきた偽りの文に違いない
無一郎の本心ではなく、ゆきを精神的に追い詰め、傷つけるための罠かもしれない。
身ごもっている今のゆきにそれを見せれば、心身にどれほど恐ろしい負担がかかるか分からない。
「すまない」
義勇の低い声が廊下に響く。
「お前と、その腹の中の命を守るためだ。理不尽だと思ってもいい。だが、今はこれを見せるわけにはいかない」
強硬な手段に出た義勇の手首を掴む力には悲壮な覚悟が込められており、ゆきは溢れる涙を止められないまま、呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。
目の前で、悲しそうに涙するゆきを抱きしめた。
当然ゆきは、それを拒む
「離して!義勇さんに抱きしめられたくない!」
そんな事はわかっている…だけど
「俺がお前を、抱きしめたいんだ。」
廊下の向こうから隠達の話し声が聞こえてきた。
義勇は、ゆきを簡単に横抱きにして部屋へと連れ帰った。
二人きりの空間で、義勇はついにあの嵐の夜の話をしようと決意した。
横抱きにしたまま義勇は、腰を下ろす。
「ゆき…このまま俺の話を聞いて欲しい」