第110章 身体の異変〜冨岡義勇【R強】
「ゆきさん…」
幸が口を開く
「単刀直入にお聞きします。霞柱様は現在長期任務で長らくご不在のはず。それなのに、なぜすぐに『霞柱様のお子だ』と、そこまではっきり思い当たったのですか?」
幸の思いがけない追及に、義勇の心臓は大きく跳ねた。
「幸! やめろ!」
義勇は反射的に、幸を黙らせようとしたが、事の重大さと矛盾を察している幸の口は止まらなかった。
「霞柱様が任務へ出られる前夜…お二人は、愛し合ったのですか?それに少し前から月のものも遅れていたのではないですか?」
その決定的な問いが落ちた瞬間、義勇の顔からスッと血の気が引いていくのがわかった。
そうか…俺があの嵐の夜に抱くよりも前に、時透に抱かれていたとしたら…。
時透との関係はうまくいっていないとばかり思っていたが、もし出発の直前に、二人が体を重ね合わせていたのだとしたら…
義勇の脳裏に、嵐の夜の甘い記憶が蘇る。
ゆきが媚薬を煽ってしまい、熱に浮かされ苦しんでいた夜。
幸が、その熱を逃がそうと彼女に触れようとした。
だが義勇は、他にゆきを触らせることなど到底耐えられず、幸からゆきを奪い取った。
最初はただ、熱を逃がし苦しみから救い出すためだけのつもりだった。だが、無一郎だと信じ込んで甘く啼く彼女の熱い身体に触れるうち、義勇の理性が焼き切れた。
結局は己の欲望を抑えきれず、激しく、何度も彼女の奥深くへと愛の証を解き放ってしまった。
もし、直前に時透とも交わっていたのなら…
この腹に宿る小さな命は、一体誰のものなのだ?
時透との結晶か
それとも…俺の愛がお前に届いて生まれた結晶か
義勇は、未だに背後からゆきの身体を抱きしめたままだった。
腕の中のゆきは、幸の核心を突く質問にビクッと肩を震わせ、戸惑いだけを浮かべている。
これ以上、ゆきの口から真実を聞くのが恐ろしかった。
義勇はゆきを誰の目にも触れさせないように、背後からさらに深く、すっぽりと隠すように強く抱きすくめた。
そして、小さな耳元へと自身の唇を寄せると、外界のすべてを遮断するように低く囁いた。
「…答えなくてもいい。部屋に戻ろう」
義勇は、そう告げるとゆきを抱きかかえゆきの部屋の方へと向かった。