第110章 身体の異変〜冨岡義勇【R強】
今日一日は、ゆきは体調が戻らず、ずっと横になっていた。
夜になっても何も口にしないまま、ずっと眠り続けている。
義勇は、ゆきの部屋のすぐ近くにある客間に寝泊まりすることを決めた。
しかし、一つ困った事が起きた。
世話役として同じ部屋に泊まることになったのは、女性である幸だった。
「幸なら女性だから時透様も怒らない」と、無一郎の屋敷の隠たちが気を利かせて決めたことだったが、義勇の胸中は穏やかではない。
(幸は、心は男だ…それに、ゆきを好いている…)
一線を越えるような真似はしないと信じたいが、男としての嫉妬や焦燥が入り混じる…。
ゆきの身を案じるあまり、義勇は寝床に横になってもなかなか寝付けずにいた。
ーーー
同じ部屋の薄暗がりの中、幸は静かに眠るゆきの寝顔を見つめていた。
本人は「原因不明の重い病にかかった」と思い込んでいるが、幸はそれが妊娠の兆候であることに気づいていた。
そして、そのお腹の子の父親が誰であるかも…
二週間ほど前…媚薬を飲んだゆきさんの熱を逃がすために、師範は何度も彼女を抱いた。
私が、熱を逃がすと言ったのに師範は、聞き入れてくれなかった。
私が、していれば…腹に子が出来ることなどなかった。
あの時の交わりで、ゆきさんは確実に身ごもったんだ…きっと。
霞柱様は任務で不在だし、お腹の子は間違いなく師範の子のはず…
だけど…任務に出る前夜に二人がもし交わっていたのなら…
霞柱様が、父親の可能性が出てくる…。
ゆきさん本人は、その事実すら知らず、ただ霞柱様からの手紙が来ない絶望と、得体の知れない体調不良に怯えている…。
そっとゆきの額に触れた幸の手は、微かに震えていた。
自身の秘めた恋心を心の奥底へ押し込め、幸は小さく息をつく…。
「私が、いくらあなたを愛しても子をなすことなど無いのに…。こんな苦しい思いをする事も無かったのに…。」
ゆきの唇にそっと指で触れた…
そして、幸はゆっくりと顔を寄せていく…美しく綺麗な顔がゆきを覆った…
唇が触れ合う…幸の心が甘く切なく満たされていく…。