第110章 身体の異変〜冨岡義勇【R強】
「あの…昼間の警備を兼ねた稽古ですが、毎日来ていただくのも申し訳ないので、今日でおしまいにしてください」
義勇は、そのまま完全に固まってしまった。
「…えっ?」
「よく考えたら、昼間に鬼は出ません。毎日こちらに出向くのも、義勇さんや幸さんの負担にしかならないでしょうし…申し訳なくて」
気まずそうに視線を落とすゆきの言葉に、義勇は弾かれたように立ち上がった。
「負担ではない! それに…時透にも頼まれている、問題ない」
義勇のその言葉にゆきは、驚いた。
隣に座っていた幸もたまらず両手をぎゅっと握りしめて訴えかける。
「私も、ゆきさんにお会いできるのが毎日の楽しみなんです! 決して負担なんかじゃありません!」
二人の必死な様子に、ゆきは迷いながらも、ずっと胸に引っかかっていた本音をぽつりとこぼした。
「でも…義勇さん、最近私と目も合わせてくれないですよね? 私が来ることが、なんだか面倒になってしまっているのかなって…」
「いやっ…それは」
ー目を合わせないー
図星を突かれた義勇の顔が激しく動揺に染まる。
居ても立ってもいられなくなった義勇は、幸の手を振り払うようにしてゆきを奪い取り、肩をがっしりと掴んだ。
「違う…! めんどくさくなどない!」
切羽詰まった声で叫び、義勇は必死にゆきの瞳を覗き込もうとする。
しかし、あの嵐の夜に欲望のままゆきを抱いてしまったという甘美な罪悪感が頭をよぎり、結局また視線を泳がせてしまう。
「ほら…また目をそらしましたよね?」
「い、嫌で目を逸らしているわけではない!」
ゆきは、不思議そうに義勇を覗き込んだ。いつもこちらが引くくらい距離を詰めてくるのに、ずっと避けられているので嫌われたのならこのまま関わりを無くそうと考えていたのだった。
「俺の勝手な事情だ。だから…頼むから、もう二度と『来ないでくれ』などと言わないでほしい」
不器用極まりない、義勇の発言にゆきは混乱した。
義勇さんの勝手な事情って何なんだろう?聞けるような雰囲気ではなかったのでゆきは、また二人を受け入れる事に決めた。