第109章 妖しい三人の夜〜冨岡義勇【R強強】
「駄目に決まっているだろ!」
語気荒く放たれた義勇の言葉に、ゆきは怯むことなく言葉を返す。
「幸さんは、私を妹さんと重ねているだけなんです、きっと」
「駄目だ」
義勇はゆきの手首を引き寄せると、勢いよくその体を抱きしめた。
「義勇さん…?」
彼から溢れ出す尋常でない気迫に圧倒され、ゆきは思わず息を呑んだ。
「…分かりました」
ゆきが諦めたように小さく頷くと、義勇は安心した様子で、静かに腕の力を緩めた。
引き寄せていた体を解放しながらも、本当はもっと抱きしめたままでいたかったと義勇は思った。
ゆきは胸の動悸を悟られぬよう、そっと問いかける。
「あの…義勇さん。ところで無一郎くんは、任務先で元気にしているのでしょうか?」
「あぁ。今朝、鎹鴉が伝達に来た。鬼がなかなか尻尾を出さないらしく、しばらくあちらにある美月の実家で暮らすそうだ」
その言葉を聞いた瞬間、ゆきの表情が一気に曇った。
「…そうですか」
ーーー
結局、幸は一人でお風呂へ向かうことになった。
外の嵐は勢いを増し、窓や戸をカタカタと激しく鳴らし続けている。
まるでゆきの心の中のようだった。
胸の奥に渦巻くモヤモヤとした苦しさは、時間が経ても増すばかりだ。
ゆきは、熱を持った体を冷まそうと、湯上がりに水を求めて台所へ立ち寄ると、そこには先客がいた。
「あっ…ゆきさん。喉、乾いてますか? これ、飲みます?」
柔らかい笑みを浮かべた幸から差し出されたコップ。
それをもらう前にゆきは、幸に謝った。
「背中を流せなくてごめんなさい。」
「気にしないでください。さぁ飲んで…」
ゆきはそれを冷たい水だと疑いもせず、一気に飲み干した。
「えっ……?」
喉を通った直後、お腹の底から焼けつくような熱が湧き上がり、全身の血が激しく巡り始める。
水ではない……そう気づいた時には、すでに視界がぐらりと揺れ始めていた。
ーーー
義勇は、湯上がり廊下を部屋に向かい歩いていた。
台所の方から何やら話し声が聞こえてくる…。
「ゆきさん、大丈夫?」
「う〜ん…まだ、飲める…」
その声が、お酒に酔ったゆきだと義勇はすぐに気が付いた。