第108章 不安〜冨岡義勇【R】
「甘露寺が鴉を飛ばして事情を話した。その結果、俺がこの屋敷を護ることになった。時透の希望で夜間は信頼できる隊士を配備するが、俺もいつでも駆けつけられるよう備えている」
「わ、分かりました…義勇さん、ですから一旦離してください」
状況は理解したものの、密着した体温の熱さに耐えかねて、ゆきは胸元にある義勇の太い腕に手を添え、必死に押し開けようとした。
しかし義勇は、ゆきの両手首を片手で軽々と握り込み、呆気なく頭上へと拘束してしまう。
「そんなに嫌わないでくれ…」
「え…?」
低く切ない声の響きに、思わずその顔を見上げた瞬間だった。
不意を突かれ、重なる唇。
「んっ…!?」
驚いて身を引こうとするが、固く縛られた腕と腰を抱く強い力によって逃げ場はどこにもない。
義勇はそのまま、隙間を埋めるようにさらに深く口付けを重ねてきた。
拒む暇さえ与えないほど濃厚で、甘い口づけ。
熱い吐息が交じり合い、柔らかな唇を何度も擦り寄せられるたび、ゆきの頭の中は真っ白に染まっていく。
「…ん、ぁっ…」
逃げ出したいはずなのに、全身の力がゆっくりと抜けていく。
恐怖と不安で冷え切っていたはずの身体が、義勇から伝わる圧迫感と強い熱によって、温まっていくのがわかる…。
だけど…ここで、こんな事してはいけない…ここは、無一郎くんと愛し合った部屋…。
そんな事を考えているうちに、義勇が唇を離してくれた。
「すまない…どうしてもお前を、目の前にすると…触れたくなるんだ。駄目だな…気持ちが我慢できない。時透が、側にいないせいなのか?いつもより我慢が、きかない…。」
そんな義勇の胸中を告白されてゆきは、返す言葉がなかった…。
その時廊下から、幸の声が聞こえた。
「師範、私も怪我が良くなったゆきさんとお話ししたいです。入ってもよろしいでしょうか?」
義勇が、拘束を緩めたと同時にゆきは、義勇の腕の中から抜け出して襖を開いた。
幸がゆきの姿を見て表情が、明るく変わる。
「立てるようになったんですね。良かった。」
ふと、少し乱れたゆきの胸元に幸は目がいく…
義勇は、さり気なくゆきの手を引き幸に、背を向けさせた。