第108章 不安〜冨岡義勇【R】
門の前では、幸が不服そうな表情を浮かべて義勇の事を待っていた。
見れば見るほど、男性とも女性ともつかない中性的な佇まいをしている。
その整いすぎた容姿も相まって、義勇の胸中に芽生えた疑惑と不信感は大きく膨らんでいた。
「早速、言いつけを破ってくれたな」
感情の読めない声でそう吐き捨てる義勇に、幸は、硬い声で応じる。
「申し訳ありません」
言葉とは裏腹に、その瞳には深い苛立ちが燻っていた。
義勇は幸を冷ややかに見据えると、続けた。
「…ゆきに、むやみに接触するな」
それだけを低く残し、義勇は苛々を抱えたまま帰路を急いだ。
───
それから数日後。ゆきの足の傷は、無一郎が手配してくれた別の医師の手によって無事に手当てを受け、順調に回復へと向かっていた。
少しずつ歩けるようにもなり、穏やかな日々が戻りつつある。
甘露寺が何度か見舞いに訪れては明るい笑顔で元気づけてくれたおかげで、波立っていたゆきの心もすっかり落ち着きを取り戻していた。
そんなある日の昼下がり。
ゆきは親しくなった隠たちと一緒に、庭の見える縁側でお昼ご飯を食べていた。
「ゆきさん、足の具合はどう? お肉もちゃんと食べなきゃ駄目ですよ!」
「ふふ、ありがとう。もうすっかり良くなったから大丈夫」
賑やかな会話と温かい陽気に包まれ、ゆきは久しぶりに心からの笑顔を見せる。
紙飛行機を抱きしめて泣いていたあの日の苦しさは、少しずつ柔らかい思い出へと変わりつつあった。
だが、そんな穏やかな時間を破るように、ふいに影が落ちる。
「…楽しそうですね」
凛とした爽やかな中性的な声。
振り返ったゆきの視線の先に立っていたのは、静かにこちらを見る幸の姿だった。
ゆきは、驚き言葉に詰まる…
心臓の音が速まる…と同時に、幸の後ろから見慣れた羽織が目に入った。
「ゆき…足は良くなったのか?」
声を聞いた途端…なぜか、安心する自分がいた。
隠達は、お善を片付け会釈をし席を立った。
「近くで、任務があり寄ったんだ。」
「そ、そうですか…」
ゆきが、立ち上がろうと腰を上げたその時体勢を崩してしまいよろけてしまった。
すかさず支えるように、幸に抱きしめられたと思った…。