第107章 足の怪我〜時透無一郎【R強強】冨岡義勇【R微】
「そのままでいてね」
無一郎は優しく囁くと、怪我をした足を庇うゆきを抱え直し、湯気がうっすらと満ちる浴室へと足を踏み入れた。
ゆきの足に巻いた手拭いが濡れてしまわないよう細心の注意を払いながら、風呂椅子に腰掛けさた。
そして桶にとったぬるま湯で、驚かせないようにそっと肌を湿らせていった。
「熱くない? 」
「うん」
自分の浴衣の袖を軽く捲り上げただけの無一郎。
ゆきは自分が何も身につけていないことが恥ずかしくてたまらず、小さく身を縮める。
無一郎の手つきはどこまでも丁寧で、慈しむように泡立てた手拭いでゆきの首筋や肩、背中を撫で上げていく…。
湯気の中で向けられる無一郎の視線は、今までのすれ違いを埋めるかのように優しい…。
明日からの任務で離れる不安、そして義勇への嫉妬心が、その手つきをいつも以上に愛おしげにさせているのかもしれない。
一通り身体を洗い終えると、無一郎はゆきを再び抱き上げ、脱衣場へと戻った。
そこに用意されていた椅子へそっと腰掛けさせると、無一郎は大きな手拭いを手に取り、ゆきの身体に残る水滴を一つひとつ吸い取るように優しく拭っていく。
肌に触れる布越しに伝わる無一郎の体温に、ゆきは顔を真っ赤に染めて小さく身を震わせた。
拭き終えると、無一郎は用意しておいた柔らかな寝間着をゆきの手に丁寧に通し、帯を優しく結んでやった。
「これで大丈夫。…よし、部屋に戻ろうか」
ゆきを抱きかかえて静かな自室へと戻り、畳の上へそっと降ろす。
そして、ゆきの頬に触れるか触れないかほどの距離まで顔を近づけると、少し首を傾げて囁いた。
「まだ寝ないでね。僕、すぐにお風呂行ってくるから」
返事を聞く前に、無一郎は名残惜しそうにゆきの髪に唇を寄せ、そのまま静かに部屋を後にした。
優しすぎる無一郎の態度に、残されたゆきは、トクトクと早く打つ胸の鼓動を抑えられずにいた。