第107章 足の怪我〜時透無一郎【R強強】冨岡義勇【R微】
不満を隠そうともせず、幸は短く「はい」と返事をした。
そう、ゆきを横抱きにしているのは義勇だった。
幸が包帯の交換に向かうと聞き、約束通り同行していたのだ。
「時透は、山へ行ったのか?」
義勇の低く落ち着いた声が、耳元で心地よく響く。
「はい…美月と、稽古に行きました」
そう答えるゆきの瞳に落ちる影を見逃さなかった義勇は、幸へ部屋から出るよう静かに合図を送った。
幸は悔しそうに拳を握りしめたまま、一礼して去っていく。
部屋に残されたのは、義勇とゆきだけ。
義勇はゆきを横抱きにしたまま、静かに語り始めた。
「お前も知っての通り、あいつは俺の新しい継子だ。女性だが…どこか青年にも見える、不思議な奴だ」
そのまま、義勇はゆきを抱きながら座ると膝の上で抱いた。
肌から伝わる熱と、義勇特有の包容力にゆきの胸が嫌でも高鳴る。
「…お前が言ったように継子を取った。俺の側に毎日あいつが居る…嫉妬してくれるか?」
予期せぬ問いかけに、ゆきは慌てて首を横に振った。
「してない…です」
無一郎と美月のことで心がいっぱいだった自分を隠すように答えると、義勇は大きな手のひらで、そっとゆきの頬を優しく包み込んだ。
その指先から伝わる温もりが、足の痛みを忘れさせるほど優しかった。
義勇はまっすぐな瞳でゆきを見つめ、熱を孕んだ声で呟いた。
「俺は…あいつのお前に対しての接し方に、嫉妬している」
「えっ?」
「お前が、心配だから今日も同行してきた。医術は優れていて胡蝶と並ぶ程だと思う。だが…お前への接し方がどうも…気になる。」
「幸さんは、女性ですよ?」
義勇は、ゆきを胸元にぎゅっと抱き寄せた。
「わかっている、わかっているが、見た目は線の細い男にしか見えん。だからお前もあいつが、俺の側に居ても嫉妬しないのだろう?」
「そんな理由ではないです…」
「時透は、お前の婚約者でそれは理解したくないがまだ百歩譲って耐えれるが…継子のあいつのお前に対しての触れ合いは…許せん。我慢できない。」
義勇の顔が赤くなっている。ゆきも、そんな義勇を見ているとつられて自然と顔が、火照っているのが自分でもわかった…。