第107章 足の怪我〜時透無一郎【R強強】冨岡義勇【R微】
ふわっと浮いた紙飛行機は、天井に届くことなく力なく畳へと落ちた。
部屋にぽつんと取り残されたゆきは、敷かれた布団に横たわる。
じわじわと足の裏が疼き始めていた。
ガラス片を抜く時も激痛だったが、かなり奥まで突き刺さっていたのだろう。
痛いな…
痛む足を庇いながら、ゆきは無一郎の事を考える。
自分を抱きしめて「奪われたくない」と縋ってきた昨夜の姿。
それなのに、美月に押されれば結局断れずに山へ行ってしまう優柔不断さ。
美月という存在が、彼の心の中で大きくなっているのは紛れもない事実だった。
「はぁ…」
重い溜め息が口から漏れた、その時だった。
「ゆき様、足の包帯交換の為に水柱様の継子の方がいらっしゃっています」
障子越しに隠の声が響き、ゆきが目を向けると、すっと襖が開かれた。
そこに立っていたのは、幸だった。
女性でありながら、どこか凛とした端正な顔立ち。
すっきりと背筋を伸ばし、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる青年のように美しい姿に、ゆきは思わず以前手当てしてもらった時の事を思い出し後退る。
「私が処置を担当しましたので、完治するまでお世話をさせてください」
落ち着いた声でそう言うと、幸はゆきの枕元に腰を下ろし、手際よく手元に手当の道具を並べ始めた。
「痛みますか?」
「あ…少し、疼くくらいで…大丈夫です」
「我慢してますよね? 破片はかなり深かったですから痛いはずです」
真剣な眼差しで傷口を見つめ、丁寧に包帯を解いていく幸。
今日も、幸の手つきはどこか色気が漂う…ゆきの足に触れ愛撫するように這わせる。
それに、ゆきとの距離がとにかく近かった。包帯を替え終えてもずっと優しくゆきの足を擦る幸…。
「あ、ありがとうございます。」
ゆきが、耐えきれずお礼の言葉を告げた。
幸は、ゆっくりとゆきに距離を詰める。
「さ、幸さん?」
その時…部屋の襖が開き誰かに後ろから抱きかかえられた。
ゆきの身体が宙に浮く…
幸は触れ損ねた手を、ぐっと握りしめた。
「お前は、むやみにゆきに触れようとするな!」
力強く甘いその声…
横抱きにされたゆきは、その声の主が誰かすぐにわかった。