第107章 足の怪我〜時透無一郎【R強強】冨岡義勇【R微】
美月が手当たり次第に集めてきた治療道具を抱え、荒い息を吐きながら部屋へと戻ってきた。
散乱する包帯や薬を前に、幸は静かに柱二人へと向き直る。
「足の怪我の処置には着物をめくる必要があります。…男性方は、一度退室していただけないでしょうか」
その言葉に、真っ先に眉をひそめたのは無一郎だった。
冷たい視線を幸に向け、不機嫌さを隠そうともせずに言い放つ。
「嫌だね。僕はゆきの婚約者だ、出る理由がない。出ていくなら君の師範の方じゃないの?」
幸は引くことなく、まっすぐ無一郎の瞳を見つめ返した。
「いくら婚約者様であっても、こういった場面ではきちんと線を引くべきかと思います」
「無一郎様! この方の言う通りです、私たちは一度出ましょう?」
すかさず美月が無一郎の手を取り、部屋の外へ促そうとする。
美月にしてみれば、無一郎をゆきから引き離す絶好の機会だった。
しかし無一郎は、納得いかない、女だが誰もが見惚れるほど端正で綺麗な青年の姿をしている幸が残るからだった。
その指先が再びゆきに触れるのだと思うと、無一郎の胸の奥がざわつく。
だが、幸はそんな柱たちの葛藤を立ち切るように、毅然とした声で部屋全体に告げた。
「一刻も早く手当てをして差し上げたいのです。皆様、どうかお引き取りを。…このまま揉めていては、一番お辛いのはゆきさんですよ」
正論を突きつけられ、義勇と無一郎はぐっと言葉を詰まらせる。
荒い息をつくゆきの苦しげな様子を目にしたらさすがに、こんな事でごねてはいられない…
それに、幸はあくまでも女性だ。
見た目こそ青年のようだが、女性なのだから…
「時透…幸に任せて俺達は、部屋を出よう。」
そう言って義勇が、先陣を切って部屋から出て行った。
それに、続き美月に手を引かれながら無一郎も部屋を出て行った。