第107章 足の怪我〜時透無一郎【R強強】冨岡義勇【R微】
「よかった…熱、少し下がってきたね」
虚ろな瞳のゆきの首筋にそっと手を添え、無一郎は愛おしそうに微笑んだ。
「無一郎…くん…?」
「足はどう? まだ痛む?」
「優しい…何で」
ゆきは、虚ろな目で無一郎を見ている。
気まずそうに目をそらし無一郎は、布団の中に手を入れ、彼女の足を優しく包み込んだ。
「足…熱を持っているね。今日、蝶屋敷に行こう。胡蝶さんに診てもらった方がいい」
返事を躊躇うゆき
そんな二人の静けさを破るように、廊下から隠の焦った声が響いた。
「時透様! あの…冨岡様がお見えです! ゆき様に会いたいとおっしゃって…」
「え…? なんで冨岡さんが…?」
無一郎が廊下へ出ると、そこには血相を変えた義勇が立っていた。
「ゆきが熱を出したと聞いた…! 怪我のせいではないのか!?」
「そうだと思います。だから今から、僕が蝶屋敷へ連れて行きます。冨岡さんは帰ってください。」
二人の柱が火花を散らす背後で、その様子を見つめる二つの影があった。
義勇を唆した美月と、新しく継子となった幸だ。
女性でありながら、誰もが見惚れるほど端正で綺麗な青年の姿をした幸。
ゆきの手当てをしたのは幸だ…。
あの時触れた、繊細で壊れそうな体
ガラス片を抜く時に聞いた声…苦しむ表情…そして漂う甘い香り…
幸の頭から離れなかった。
私の手当てじゃ足りなかったか…
美月のドロドロとした嫉妬とは違う。幸の胸を激しく揺さぶっているのは、ゆきという存在そのものへの強い惹かれと、抗えない魅力だった。
柱たちをここまで狂わせる理由が、身をもって理解できる。
襖の奥で荒い息をつくゆきを見つめる幸の瞳には、熱を帯びた秘めやかな想いが芽生えていた。
自分が、もう一度傷を診てあげたいと思った幸は柱二人に、割って入った。
「私に、ここでもう一度きちんと消毒し手当をさせて頂けませんでしょうか?」
義勇は、幸が付いて来ていることに気づいていなかった。
「私、手当の用意を持ってきます!」
美月がそう言って廊下を駆け抜けた。
義勇が、幸を見る
「勝手について来たのか?」
「申し訳ありません…。私もゆきさんが心配でしたので」
無一郎は、そう話す幸をじっと見据えていた。