第106章 義勇の新しい継子〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
唸り声―?
暗闇のなか、何かが苦しそうに喘ぐ声で、目が覚めた。鬼か、それとも…。
まだ薄暗い真夜中、無一郎は寝汗をかいて跳び起きると、咄嗟に隣の布団へ視線を走らせた。
そこには、苦しそうに身悶えするゆきの姿があった。
そっと額に触れると、すごい熱だった。
昼間のガラス片による怪我…その傷口から熱が出たのだと、無一郎はすぐに悟った。
「ゆき? 大丈夫? すぐ解熱剤を持ってくるからね」
荒い息を吐き、うなされ続けるゆきの姿に、胸が強く締め付けられる。
冷たく当たってしまった後悔が、波のように押し寄せていた。
無一郎はなりふり構わず部屋を飛び出し、薬が保管されている部屋へと走った。
水を入れた湯呑と薬を抱え、息を切らして部屋へ戻ると、熱で虚ろになった瞳のゆきがじっと無一郎を見つめていた。
「大丈夫だから…さあ、薬を飲もう」
急いで体を抱き起こし、薬を口に含ませようとするものの、意識の朦朧としたゆきはうまく飲み込むことができない。
水が伝って溢れてしまうのを見て、無一郎は小さく呟く
「…ごめん」
痺れを切らした無一郎は、迷わず薬と水を自分の口に含むと、そのままゆきの唇を塞いだ。
口移しでゆっくりと薬を流し込んでいく。
重なり合う唇と舌から伝わってくる熱は、焼けるように熱く、そしてどこまでも甘く切なかった。
無一郎の強がりや素っ気ない態度の裏に隠していた想いが、溢れ出すように熱を帯びてゆきの口の中に注がれていく。
薬を飲ませ終えても、無一郎はそっとそのままゆきの体を強く抱きしめ、熱い額に自分の額を重ねた。
「ごめんね…嘘ついてごめん。今日言った事は全部嘘だよ…。君を傷付けるような事ばかり最近僕は、言ってしまう。自分でもわからないんだ…何故そうしてしまうのか…意地悪してごめんね。」
暗闇の中、囁いた無一郎の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。