第106章 義勇の新しい継子〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
ゆきは渡された寝間着に袖を通すと、今日怪我をした足元へ視線を落とした。
奥まで刺さったガラス片を抜いた傷口が、今もズキズキと深く痛む。
しかしそれ以上に痛むのは胸の奥だった。
『もう触ろうが見ようが、何も感じないから』
無一郎の冷たい言葉が耳から離れない。
どんどん無一郎の気持ちが自分から離れていっている…ゆきはそう感じていた。
すれ違う心を持て余しながら、ゆきは昼間の出来事を思い出していた。
怪我をした自分を治療してくれたのは、幸と言う隊士だった。
義勇の新しい継子である幸に偶然出会い、そのまま屋敷へ運ばれ、治療時に痛みに怯える自分を、義勇はそっと後ろから抱きしめ、落ち着かせるように優しく包み込んでくれた。
あまりの激痛に気を失ってしまったけれど、彼の腕の中は不思議なほど心地よく、温かな安心感に満ちていた。
義勇さんは、あんなに優しくしてくれたのに…
無一郎の態度との落差に胸を痛めていると、不意に襖が開く音がした。
ハッと息を呑み、ゆきは現実に引き戻される。
湯上がりで髪を濡らした無一郎が、部屋へと戻ってきたのだ。
どこか不機嫌な雰囲気を纏ったまま、無一郎は手拭いで乱暴に髪を拭き、ゆきのすぐ隣へと腰を下ろす。
「…着替え、終わったんだ」
無一郎の声は低く、感情を押し殺したように淡々としていた。
「うん」
本当は、自分に触れるたび高鳴っていた無一郎の鼓動の理由を、ゆきは知らない。
無一郎もまた、冷たい言葉で必死に隠した自分の熱意が、ゆきを深く傷つけていることに気づいていなかった。
言葉を足せば足すほど深くすれ違っていく二人…
「足、痛むの?」
無一郎が、素っ気なく聞く
本当は、痛いがゆきは嘘をついた。
「痛くない。」
「そう」
そんな会話を交わすと無一郎は、横になった。
「明日は早朝から、山に稽古しに美月と行くからもう寝るけど、灯りはどうする?」
「私も寝るから消していいよ…」
真っ暗になった部屋で、気まずい空気のまま無一郎は目を閉じた。
本当は、こんな強がらずにゆきを抱きしめながら眠りたかった…。