第106章 義勇の新しい継子〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
ー無一郎の屋敷ではー
「もう、わかったよ。見ないから…あっち向いておく」
無一郎は、自分の善意を拒むゆきに苛々をつのらせていた。
お風呂に入れないゆきの体を拭いてやろうと、お湯を張った桶が部屋に運び込まれた。
固く絞った手拭いを手にした無一郎は、少し不機嫌そうに背を向ける。
その背中を確認し、ゆきは安堵の息を吐きながら泥で汚れた着物をそっと脱ぎ捨てる。
そして、慌てて大きめの布で身体を隠した。
「もういい? 脱いだ?」
「…うん」
無一郎は小さくため息をつくと振り返り、布の隙間からそっと手を差し入れた。
まずは背中から、手際よく肌を拭っていく。
「…隠す意味なんてあるの?」
淡々とした声とは裏腹に、手拭い越しに伝わるゆきの肌の柔らかさに、無一郎の心臓は跳ねていた。
ゆきに、触れるたびに胸の奥が煩いほど鳴っている。
手拭いがお腹から胸元へと差し掛かろうとしたその時、ゆきがそっと無一郎の手の上に自分の手を重ねて止めた。
「ここは…自分で拭くから」
重ねられた手の温もりと、頑なに自分を拒もうとするゆきの態度。
愛おしさと同時に、動揺を隠すための無性に腹立たしい感情が胸を満たしていく。
素直になれない苛立ちに任せ、思わず口走ってしまった。
「もう触ろうが見ようが、何も感じないから自意識過剰だよ君は。」
吐き捨てた言葉の冷たさに、ゆきの肩が小さく揺れる。
本当は違う。
触れれば触れるほど愛おしくて、溢れそうな鼓動を必死で殺しているのに。
動揺を悟られまいと、無一郎は重ねられた手をそっと振り払うと、意地を張るようにそのまま胸元へと手を滑り込ませた。
規則正しく打つゆきの脈拍を感じながら、無一郎は逃がさないようにゆきを強く引き寄せる。
「だから…余計な抵抗なんてしないで」
強がりな言葉とは裏腹に、耳元で吐き出された無一郎の息は、隠しきれない熱を帯びて震えている。
しかし…ゆきはそれには気づかない…。
気持ちを抑えつつ無一郎は、ゆきの体を拭き終える。新しい浴衣を彼女の隣に出した。
「お風呂に入ってくるから今のうちに着替えといて。」
無一郎は、高鳴る鼓動を抑えながら風呂場へ向かった。