第106章 義勇の新しい継子〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
朝になっても、ゆきの熱が下がる兆しはなかった。
無一郎は一睡もせず、夜通し彼女の額の手ぬぐいを替え続けていた。
美月との会話を聞いて、傷つけ、裸足で屋敷を飛び出させてしまった…足の裏の痛々しい傷も、この激しい発熱も、すべて自分が招いた結果だった…。
「ごめん…僕のせいだ。痛かったよね…」
昨夜飲ませた薬も効かず、荒い息をつくゆきに後悔が募る。
そこへ、隠から解熱剤をもらってきた美月が息を切らして駆け込んできた。
「無一郎様! 隠の方から別の解熱剤をもらってきました!」
「ありがとう、美月」
無一郎は受け取った薬と水を迷わず自分の口に含むと、迷うことなくゆきの唇を塞いだ。
少しでも早く効かせるため、口移しでゆっくりと喉の奥へ薬を流し込んでいく。
重なり合う二人の唇と、ゆきを抱きしめる無一郎の愛おしそうな眼差し。
その光景を目にした瞬間、美月の顔から血の気が引き、胸の奥で激しい嫉妬が一気に湧き上がった。
どうして…そんなに愛おしそうな表情をするのですか…?
自分に向けられたことのない無一郎の情熱的な態度に、美月は拳を強く握りしめ、じっと二人を見つめていた。
薬を飲ませ終えた無一郎は、美月の視線にも気づかぬほどゆきに没頭し、その額に自分の額を重ねた。
「大丈夫?ゆき…足も痛むよね…ごめんね」
無一郎の目から溢れ出た一滴の涙がゆきの頬を濡らす。
その一筋の涙すらも、美月には耐えがたいほど羨ましく、そして憎らしく見えていた。
美月は、何かを思い立ったかのように部屋を出て、屋敷を飛び出した。
そして、向かった先は…
義勇の屋敷だった。
美月は息を荒らげ、義勇の屋敷の門を深く叩いた。
出迎えた義勇に対し、美月は酷く心配そうな表情を浮かべて声を絞り出す。
「冨岡様…ゆきが熱を出して下がらず無一郎様が看病しています。冨岡様にお知らせしておこうと思いまして。」
健気に知らせに来た者を装いながらも、その陰で巧みに義勇の焦りを誘う美月。
知らせを聞いた義勇は居ても立ってもいられなくなり、一刻も早く様子を確かめようと、無一郎の屋敷へと駆け出した。
美月は、その後を追った… そしてもう一人…新しく義勇の継子になった幸が、二人の後を追った。