第106章 義勇の新しい継子〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
「ゆき様、時透様がお迎えに来られました」
襖の向こうから隠の声が響くと同時に、すっと無一郎が部屋に入ってきた。
その気配を察した幸は、さっとゆきの足を撫でる手を離すと、何事もなかったかのように隣で正座し直す。
「…足、怪我したって聞いたけど。大丈夫?」
私の元へ歩み寄る無一郎の表情には、偽りのない心配の色が浮かんでいた。
「うん…」
短く答えるのが精一杯だった。そんなゆきを、無一郎は咎めるように見下ろす。
「草履も履かないで飛び出していくなんて…何考えてるの!?」
言葉に詰まり、ゆきはそっと視線を落とした。
…何考えてるの、なんて…無一郎くんが美月との仲を見せつけるようなことをしたからじゃない…
胸に込み上げる切なさを押し殺し、絞り出すように呟く。
「別に、何も考えてない」
「はぁ? 君には本当に呆れるよ。それに…どうしてまた冨岡さんのところに来てるのさ」
呆れたように溜息をつく無一郎に、ゆきは何も言い返せない。
その重苦しい沈黙を破るように、それまで静観していた幸がすっと口を開いた。
「霞柱様、ご挨拶が遅れました。本日より水柱・冨岡義勇様の継子となりました、幸と申します」
凛とした声で頭を下げた幸は、すっと顔を上げ無一郎を見た。
「ゆき様がこちらにいらっしゃるのは、たまたまお怪我をされているところを私が発見し、手当のために連れて参ったからです。決してゆき様ご自身の意思で、こちらの屋敷を訪れたわけではございません」
礼儀正しくもどこか隙のない幸の言葉に、無一郎はかすかに眉をひそめた。
「そうなんだ。」
無一郎は、ゆきに目を向けた。
「冨岡さんは?留守なの?」
幸が割って入った。
「時透様に、鴉を飛ばされた後すぐに、何処かに出掛けられたみたいです。」
「ふーん。じゃあ帰ろうか、ゆき」
ゆきは、無一郎に連れられて義勇の屋敷を後にした。
二人が屋敷を後にする姿を、義勇は隠れてじっと見つめていた。
同じ様に、幸もまたゆきの事をじっと見つめていた…。