第106章 義勇の新しい継子〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
ゆきは息を呑み、咄嗟に顔を背けた。
起き上がろうと焦るものの、義勇の身体の上に重なったままだ。
しかも着物姿では裾が足に絡まり、思うように動けない。
その時、腰にそっと回された義勇の手のひらから、熱いほどの温もりが伝わってきた。
「ぎ、義勇さん…!?」
「悪い…ゆき…もう少しだけ、このままでいさせてくれ」
甘い声が耳元をくすぐり、ゆきの胸が高鳴る。
「でも…」
「あと十数えるまでだ。頼む…このままで…」
甘く悲しげなその声と、抱きしめる腕の力強さに込められた切なさに、ゆきは拒む言葉を失った。
……一、二、三……
義勇の規則正しい鼓動を感じながら、ゆっくりと心の中で数を紡ぐ。
…八、九、十
数え終えても、二人の時間は止まったかのように重なり合っていた。
その後、義勇は無一郎の迎えが来るまで、ゆきを屋敷の応接間で一人待たせることにした。
自分が側にいれば、無一郎の言葉でゆきが再び傷ついてしまうかもしれない…そう思ったゆきへの、精一杯の優しさだった。
一人静かに座っていると、すっと襖が開く。
「ゆきさん、足の具合はどうですか?」
入ってきたのは幸だった。
「幸さん!先程はありがとうございました。まだ痛みますが、大丈夫です」
安堵の笑みを浮かべるゆきのすぐ近くに、幸が腰を下ろす。どこか男のように洗練された、無駄のない身のこなしだった。
「…見せてください」
幸の指先がゆきの足にそっと触れる。
言われるがままに足を預けると、幸はゆきの着物の裾を、優しく、ゆっくりとまくり上げる。
白く柔らかな太ももが露わになるまで、ゆっくりと…。
ゆきは、恥ずかしくなり足を引っ込めてしまった。
「ゆきさん?」
「怪我は足の裏です…そんなに衣をまくらなくても…」
「失礼嫌でしたか?」
幸はそう言って手を引っ込めたが、その瞳は笑っていなかった。舐めるような視線をゆきに向けている。
「…本当に、無防備で愛らしいお方だ」
低く囁いたその言葉を、ゆきは深くは考えずにいた。
幸は、ゆきの足に巻いた包帯を撫でながら隣でじっとゆきの顔を眺めていた…。